プロジェクト研究会「関西の鉄道をつくった男達」
物流から見た関西・鉄道の始まり(下)
〜最後の大鉄局長・草木陽一氏に聞く〜

 前号に草木陽一氏(西日本鉄道OB会顧問)による講演「物流から見た関西・鉄道の始まり」(1 月27 日にプロジェクト研究会として開催)の概要を掲載した が、今号では質疑応答の一部を掲載する。また、講演後に畑廣成氏( 西日本鉄道文学会)による関西の鉄道建設史にかかる写真集を映写していただいた。その中の写真の一部を掲載する。(事務局)

Q 日本でレールのゲージが狭軌となったのはなぜか。

A 日本は貧しいから、狭軌でいいと当時のイギリス人が指導してくれたと思っている。一方、狭軌であったから新幹線ができたともいえると思っている。台湾、韓国では、標準軌であったために、新幹線システムをつくるにも部分改良的なものになり、かなり困難もあったと思 われる。

Q 満鉄のゲージはどうだったか。

A 1435 でスタンダードゲージ、環太平洋〜ヨーロッ パといった鉄道計画は、桑原大先輩がモノの本に書いておられる。

Q 国鉄は、民に習うということは考えたのか。

A 大先輩で、そういうことを論じた人もいた。満鉄の場合、直営のホテルをもっていた。国鉄の場合でも、丸の内ホテルは国鉄直営だった。満鉄の場合、大和ホテルと名が付いた直営のホテルを各都市にもっていた。収益 を上げるよりは、お客さんのサービスを考えた結果だと思う。売店も客の利便を考えた結果とともに、駅は危険な仕事が多くて、足をけがしたりした人の授産施設にも なった。昭和50 年ぐらいまでそうだった。赤字になってきたから、利益を考えるようになった。

Q 公益性が中心だったのか。

A 軍事輸送、たばこ専売の輸送。郵政も駅前の一等地にあって、地下で鉄道につながっていた。安く、早く運ぶことを旨とした。公共輸送を重視した。

Q 国鉄民営化で思い起こすことは。

A 国鉄は分割ということは最初考えられていなかった が、結局分割民営化になった。分割民営にしたので、JR本社要員、2 〜 3,000 人の人が東京からJR西日本に来ることになった。もう1つは、中央集権から完全に解き放された。何も東京に伺う必要がなくなった。民営になった時、村井勉会長といって、アサヒビール、マツダを再建した人が、占領軍としてやってきた。その人の言っていることは、身にしみてわかった。僕らにくれたのは、 現金で60 万円ぐらいだったか、領収証なしで自由に使えと。これは役所ではあり得ないことであり、それだけ でも目から鱗。大阪へ帰ってきて、一番思うのは、こん な気楽な地域はないということ。東京に行くにつれ、こんな息苦しいところはないと思う。年金もらったら、みんな大阪へ帰ってこいと言いたい。もっと関西が見直さ れてほしい。私はそのためには何でもやる。

Q 地域交通をどう考えるか。

A 省エネ、時間を考えた場合、これからは鉄道の役割も変わっていくのではないか。ありがたいことに70 歳になると、パスがもらえるようになった。最近はどこへ行くのも、地下鉄、バス等を利用するようになった。こう便利だと、マイカーなんか要らないということになる。 JRも阪急ホールディングスも一緒になって、考えてもらって、こういう鉄道のあり方を考えていただければと思う。

Q 料金体系から考えると、どうしても採算性が問題になるが、何かいい方法がないものか。

A いま私は無料で乗せてもらっているが、ある程度の負担能力はあるから、本当は少しでも払わせてほしいと思っている。公共だからタダにせよというのはおかしい。 応分の負担は個人がするが、大変なお金がかかっているので、これだけで商売しようとするのは無理がある。儲けようと思えば、ショッピングセンターに土地を貸して家賃をもらう方が手っ取り早い。トータルとして成り立 つように、事業もしながら、鉄道事業、料金を安く抑えるようにする。年齢に応じて安くしたってよいのではないか。トータルとして償うようにしないと世の中に組織 として成り立たなくなる。大阪市も地下鉄をどんどん建設しているので、どんどん赤字になっている。私は、孫の代まで背負わせてもよい借金だと思う。公共財産とし て、もっと長い償却期間を設け、長い目で公共交通を見 る必要がある。ダムや河川への投資は、毎日収入が上 がるわけはない。鉄道のように収入が上がる代物でも、 1km の区間でかかった費用を料金でペイせよと言われた らたまらない。たとえば公園はなぜ金かけてつくるのか。 公共的に必要なものだからである。必要性からつくるも のと、無駄なものがあると思う。地域デザイン研究会は、 そういう意味でぜひがんばっていただきたい。

Q 昔は採算性をどのように考えていたか。

A 資料にあるように、大阪〜神戸間 下等で30 銭、 当時米が1升7 銭ぐらいだったから米の4.2 升分。儲け ている人にとっては、十分払えた。こういう時代がずっと続いた。JR西日本になってから20 年間、消費税による改訂以外は運賃値上げを一度もやっていない。なぜ かというと、民営化直前に大幅な値上げをしてもらった。 阪急、京阪、阪神の運賃と比べてみたら、私でも阪神に乗る。鉄道は、かかった費用は、どこかで償っていかないと成り立たない。

Q 国鉄の技術・歴史資料は関西に残っているか。

A 交通博物館が東京にあったのを大宮に移した。貴重 な公文書がある。きちんと保管してあり、求めに応じて開陳する約束になっている。大阪駅の改築では、実は杭がどう入っているかの資料がない。戦争の時に重要な資 料を燃やしている。だから鉄道考古学会というようなつもりで調査している。いずれ本にするつもりだ。大阪駅 の歴史もOBの星野君がつくってくれているので、続けて資料の集大成をするつもり。

Q 民間との競争、協力の関係は。

A 関西ほど、民間とJRがネットワークを組み、競争 しながら発展してきているところはないと思う。大事なことは、高齢化社会に対応してお年寄りなどに便利に使ってもらう鉄道ということをもっと志向していくべき。私がびっくりしたのは関西では、大晦日の日に終夜 運転してなかった。東京ではやっているのに。聞けば、「みんな寝てるから、ウチも寝ている」とのこと。ウチがや ると言ったらみんな一緒にやるようになった。いままで仲良しクラブで、怠け合っていた。競争するべきところは競争したらいいと思う。料金の負担力をどうするか、 JR並みの料金をもらえばいいと思う。地元も負担力はある。阪神西大阪線や京阪中之島線などは難しいところをやっていると思うが、もっと国の金を引き出すようにすべき。私が大阪に帰ってきた頃だったと思うが、ホワイティ梅田は、あらゆる補助金をうまく導入していた。 そういうことをもっと考えてやっていくべき。 最近の関西経済圏は、中部経済圏に同格もしくは引き離されていると思う。こんなことで大阪はいいのか。情けない。関経連などに任さず、若い人が、我々も使って、 もっと頑張ってほしい。


エドモンド・モレル    ジョン・ダイアック
(
日本に鉄道技術を伝えた人達)


工技生養成所(明治10年開設)
(関西の鉄道をつくった男達とはまさにこの人達)


初代神戸駅


初代大阪駅正面

京都神戸間開業時お召し蒸気機関車 後の5100形式


長浜・大津間の連絡船 太鼓丸


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