2004フォーラム
「環境都市づくりによる関西の変革」できることから始めよう!

地域デザイン研究会主催の2004年フォーラム「環境都市づくりによる関西の変革/できることから始めよう!」が2月7日、大阪市浪速区の大阪市立難波市民学習センターで開かれ、会員、市民をはじめ約100人が参加し、講演やパネルディスカッションに聴き入りました。京都市立芸術大学教授でNPOエコデザインネットワーク副理事長の池上俊郎氏が「環境先進都市・大阪の創造に向け、新しい手法を語る」と題し基調講演、この中で池上氏は、現在研究中の「既存都市・近郊自然の循環型再生大阪モデル」について再生手法の考え方などを説明、同研究を「最終的に循環型都市再生のアジアモデルにつなげたい」と語り、研究への理解と支援を呼びかけました。パネルディスカッション「こうすればできる 環境都市づくりによる関西の変革」では、菜の花プロジェクトなど環境施策を住民とともに推進している滋賀県新旭町長の海東英和氏、廃棄物管理システムとごみ箱について研究している大阪産業大学人間環境学部講師の花嶋温子氏、生態系に配慮した土木構造物の開発に携わってきた鹿島建設の堀内治氏が加わり、平峯悠地域デザイン研究会理事長の司会進行で活発な意見交換がなされました。基調講演の概略とパネルディスカッションの概略を掲載します。

2004フォーラム

■基調講演

「環境先進都市・大阪の創造に向け新しい手法を語る」
・池上俊郎氏(京都市立芸術大学教授、NPO法人エコデザインネットワーク副理事長)

■パネルディスカッション

〈パネリスト〉

  • 池上俊郎氏(前同)

  • 海東英和氏(滋賀県新旭町長)

  • 花嶋温子氏(大阪産業大学人間環境学部講師)

  • 堀内治氏(鹿島建設)

〈コーディネーター〉

  • 平峯悠氏(NPO法人地域デザイン研究会理事長)

基調講演 (要旨)

環境先進都市・大阪の創造に向け、新しい手法を語る
「既存都市・近郊自然の循環型大阪モデル」

フォーラムのテーマにあるように、私も関西の変革を環境都市づくりの観点から進めるべきだと考えています。NPOエコデザインネットワークのメンバーを中心に現在研究を進めているテーマが「既存都市・近郊自然の循環型再生大阪モデル」の構築です。これはエコデザインネットワークのシンクタンク活動AXIS4が2年間取り組んだ成果が出発点となり、科学技術振興機構の社会技術研究事業として取り上げられたもので、きょうはこの研究を中心に話を進めたいと思います。

なぜ「既存都市・近郊自然」という言葉にこだわっているのでしょうか。環境問題の1つは産業社会の問題であるが、さまざまな産業分野で環境負荷を下げる方向で取り組みがなされ、パソコンなど単体を見る限り負荷は着実に減ってきています。しかし、一般生活の中では決して環境負荷は減っていないという構図があります。都市は排熱装置と化しており、多くの一般生活が営まれている既存都市を変えていく必要性があります。また、身の回りの自然が人工的に変えられており、だからこの近郊自然を見直し、サイクルの中で説きなおすべきだと思います。その循環型再生手法について大阪を出発点にしておりますが、これは関西を含めた意味合いがあります。「既存都市・近郊自然の循環型再生大阪モデル」では、大阪市都心の密集市街地と大阪湾岸未利用地について説きます。それを構想・技術・美学に立脚し、数値化される量的検証に加え、デザインの力により社会的・文化的評価を行おうというものです。目標の1つはライフサイクルによるCO2削減、LCCO2の30%削減であり、また都市のヒートアイランド化の原因を大きな仕組みとして説くこと。デザイン重視のエコデザインの視点から、皆に愛されるものをつくろうと考えています。さらにこれらが大阪の産業再生方策に結び付けられないかと思います。我々の研究では産業再生の方策として都市農林水産業を考えています。そしてこれらの研究成果をアジアモデルの構築につなげたいと思っています。

「既存都市・近郊自然の循環型再生大阪モデル」の研究内容について、もう少し具体的に話します。この図(=配布資料参照)は日本とアジアとの関係を示したもの。また、この図(=配布資料参照)はヨーロッパの地図に日本の地図をはめ込んだもの。日本は東西・南北ともに約20度の距離にあり、弓なりになっているから長い。だから仙台あたりまでは寒帯に属し、その南から温帯に属しています。大阪、関西は温帯に属しており、そういう意味からアジアモデルをつくっていけると思っています。大阪は後背地に山や緑もありますが、もともと大阪湾に開かれて存在しています。しかし、その阻害要因として現在さまざまな埋立地があります。大阪に住む我々は、大阪湾を生きている海として取り返すべきだと思います。これを我々の研究では「近郊自然」として説こうとしています。それを環境負荷を減らす装置に、また同時に産業の基盤にしていく必要があります。

大阪湾は生きているというテーマの中で、大阪湾の海水浄化を進めながら水産業を取り戻すことを考えています。例えば魚の養殖が可能なエリアをつくり、これらに新たな技術を盛り込んでいく。また、湾岸未利用地では、植物工場を基本にして5期作〜10期作が可能な農業を盛り込もうと考えています。つまりバイオテクノロジー等を含めた第1次産業の基地に切り替えていく。図(=配布資料参照)にある未利用地から海に至る断面を取り返そうということです。つまり陸上部での産業施設であり、それは同時に雨水など水の循環利用、太陽光エネルギー利用施設であり、海際で海浜を取り戻していく。そうすることで大阪の新たな産業ができると思っています。

大阪市内(都心部)については、水と緑の存在という面から研究では中之島から靱公園へとつながるなにわ筋を中心とする2.5ku圏を捉えて考えております。

なにわ筋にはまだ地下鉄が走っていないし、側道もあり、その周辺には南堀江など都心居住として人々が集まってきている。こうした地域で環境負荷を減らす手法を、例えばビッグツリー、ビオトープというように分かりやすくシンプルに考えます。大きな木によって木陰ができ、風が抜けていく。樹高を5m、10mに伸ばしたらどうなるのかと検討していきます。それらをマップ(地図)上に置換えながら、同時に法規制をどのように変えていくべきかをも考えたいと思います。

また、なんでもエネルギーということで、都市内の未利用エネルギーを複合利用し、電気・熱エネルギーを取り出すとか、屋上緑化・壁面緑化やビオトープ、側道に水を流すという御堂筋アクアストリーム計画。

さらにサーキュレーションブティックという形で再資源化システムをより自由に変えていこうと考えています。再資源化問題ではどこにどのように配置するのかがわからない状況にあり、ほとんどのものが再資源化可能な社会の中で、例えば郵便局(ポストオフィス)のようなシステムをつくろうと考えています。

エコデザインに適うことは、これまで話したこと以外にも様々にあります。例えばなにわ筋に関しても道路マップをつくり、どのような形で公共交通機関を使えるかを分かりやすく示す。ヨーロッパでは誰でもすぐに交通機関を乗り継げるような分かりやすいマップがあるのに、日本ではその点が弱いと思います。ビジュアルな提案は重要です。それは環境負荷低減システムの利用方法を伝える国際的・地域的なエコデザインです。

また、おしゃれな2階建て2両連結のバスの提案は、走っているだけで街が楽しくなり、視覚的に街のイメージを向上させます。日本の街、特に大阪は街の姿が見えずらく、環境問題を解決していくにはまちを適切に伝えていくことが必要です。

我々の研究は6つの分野から進めていますが、都市再生エコデザイン手法として既に提案したことを、ブラッシュアップしていきます。自然再生「大阪湾は生きている」というテーマでは実証プラントを、都市中心部での環境負荷を減らすテーマでは実証アニメーションを作っていきます。ヒートアイランド脱却手法は既にさまざま蓄積されていますが、それらを俯瞰しながらハイブリッドに説いていきたいと考えております。

また、デザイン、芸術は何ができるのかを示したい。そしてLCCO2 30%削減を可能にするシステムの提示や、新たな産業、都市農林水産業のという視点を盛り込んだフラットな産業構造を提案したいと考えています。

1月に研究者9人で「目から鱗作戦」と銘打って大阪湾上空をセスナ機で飛び、目視調査をしました。大阪湾岸の低未利用地はただ単なる土地でなく、可能性を持った場所だと実感しました。環境負荷を減らす産業が発生し得るし、それをビジネスモデルに持っていくべきだと思います。キーとしては自然との一体であり、先ほど示した断面図(=配布資料参照)だといえます。

今回の調査で示唆的なものが得られました。全体的には排熱装置としての都市が残っている。大阪市内の蓄熱帯になっている状況を、屋上緑化や壁面変更等を含め変えていくシステムを見出したいと思います。中之島の水と靱公園の緑の存在は、現実に風の道になっており、この風を都市の環境問題克服のインフラに自然を含めて取り直すことが必要だといえます。我々が日常生活をしている既存の街の中で、例えば路地や大木、水辺を流れる空気、水そのものなどを環境負荷を抑えるという、従来とは違う視点で取り上げていくことが大切だと思います。大阪の南部地域では海が生きていることを感じ取りました。また、工場地帯として活性化しているエリアでも、水循環や緑をさらに有効に増やしていくシステムが必要だとか。

この研究を最終的には循環型都市再生アジアモデルにつなげようと考えています。それは食糧問題、緑化問題、水循環問題であり、インフラが未整備なアジアの都市に対し環境問題から説かれたインフラは個別解決ができます。つまりパイプライン(線)でつながっているのでなく、スポットで説けます。例えば個別に太陽光発電をする。これはつながっていない離れたところでも可能となり、アジアの多くの都市に有効なシステムができ得る。それらを共有の問題であるヒートアイランド脱却、地球温暖化防止の大きなターゲットにしていきたいと思います。

アジアモデルにつなげようというのは、先にも触れたように「大阪湾はもともとアジアに開かれていた」ということと重なっていくからです。大阪は東京とは違うし、我々の研究では、関西として普遍化できる環境先進都市大阪像をつくり上げたいと考えています。

それが生命体地球自浄性の範囲内での地球人としての役割だと思います。この研究への皆さんのご理解、ご支援をよろしくお願いします。

パネルディスカッション

こうすればできる環境都市づくりによる
関西の変革 (要旨)

平峯

基調講演で池上さんから事例を含め貴重な話をいただきました。環境問題は人によっていろんなとらえ方をしています。CO2の問題でもこれを当たり前と思っている人、自分たちの生活を変えずにこのままで環境がよくなればいいと思っている人、若い人と昔をよく知っている人など様々いる中で、日本として今後どのような都市を目指すかは、それぞれの立場を踏まえながら十分な検討を行い、意識し、行動することが必要だといえます。関西で環境都市づくり、地域づくりをするためにその陰で何をすべきかを常に考えるべきだと思います。まず4人のパネリストのうち池上さんを除く3人にそれぞれの立場から考え方についてお話していただきます。

海東

私がまず言いたいことは、自然豊かな暮らし、呼吸をするような暮らしを守る範囲はどこだろうと考えていただきたい。新旭町は琵琶湖の西岸に面し、大阪駅から新快速で1時間15分。私たちの町は人口1万1,000人、高齢化率20%。葦と水が湧いてくる町で、シベリアから水鳥がやってきます。雪が降るから虫が治まり健康な田になります。日本の自然は、人の手が入り続けて守られてきた自然です。田を作ることが農地を守っているわけで、それが生き物たちの行き場を作っています。生きものたちの行き場がなくなりつつある中で、最近、地域の人たちが残したいという姿勢になってきました。この地図は新旭町の8,000反ある田の減反分布です。約30%の2,500反を減反しなければならないので、水の満ちる自然環境が毎年大きく動きます。

私たちは減反の田を何とか生かしたいということで、菜の花を作り、菜の花の油をとって、菜の花油をテンプラ油に使って、廃油を回収しメチルエステルを加え、植物性の軽油代替燃料にして保育園の送迎バスを動かしています。化石燃料に頼らなくても植物性油で一定の車を走らせてみたいというのが狙いです。また、減反分の3分の1で菜の花を作り、その油を回すと町内の農機具すべてが植物性油で動くということの実験をしています。

私たちは地元の力、地元の材料で町営住宅をつくろうと、鉄筋コンクリートで20軒の戸建て住宅プロジェクトを進めたところ、思ったより安くなり維持管理も地元でできることになりました。私たちの新エネルギ ービジョンとして考えた1つの答えが、太陽熱温水器は環境負荷が少ない。イニシャルコストと廃棄のことを考えても余るという結論でした。

私たちが豊かに暮らす向こう側に、貧しい国の課題があります。新旭町は日本に100万発ある地雷のうち65万7,000発を廃棄することになり、いろいろ考えるようになりました。豊かさの向こう側のことを考えないとアジアと付き合うことも難しいと思います。

「逆回しの仕組みを」

花嶋

近畿2府4県195市町村が参加する大阪湾フェニックス計画では、いろんな最終処分場がつくられていますが、都市で暮らすということは最終的には最終処分場にものを捨てているのだということを理屈でなく感覚で知ってほしいと思います。私どもの大学は大東市にあり、大東市のごみは東大阪市にある東大阪都市清掃施設組合の焼却工場に収集車で運ばれ、焼却された後の焼却灰は高速道路に乗って泉大津まで行き、遠回りしたかたちで堺へ。そして船に乗り神戸沖処分場に運ばれています。ごみ箱に入れたごみがじつは、こんなに長い旅をしていることに私は驚きました。

日本の廃棄物のほとんどは今でも焼却されています。毎日ごみを出す生活をしています。お手元の資料のように、200年現在の統計数値によると、1日1人あたりの一般廃棄物排出量は1.1kgで、このうち生活ごみが600g。全国で年間5,236万t、処理費用は年間2.4兆円、1tあたり4万5,279円、1人あたりに換算すると年間1万7,800円。この約6〜8割が収集輸送費(人件費)といわれ、約13万人が収集輸送の現業に従事しています。つまりごみを出す生活が、何らかの形で負荷をかけているということです。処分場が遠くに行ってしまったのも、Not In May Back Yard(私の家の近くには作らないでね)で、神戸沖の処分場のように海上に行ってしまったわけです。

さきほど新旭町長が言ったように地産地消、その先の地リサイクルとでも言うかもっと小さな区域で処理し、自然に戻すとかとか再利用する仕組みをつくっていく必要があると思います。コンポスト化や手づくりによる再生使用が新たな楽しみになり得るのではないでしょうか。逆に最終処分場の側から見て、これだけしか捨てられないのだから何を作ったらよいのかを考えるような逆回しの仕組みが必要だと思います。20年前には中古品とか言われたフリーマーケットが、今では誰もが楽しめるようになったように。

「カニの身になりカニパネル試作」

堀内

私は当社の環境修復技術であるカニパネルとウエットコックリート、そしてこれらの技術開発上の課題や提言について話します。1990年に当社は江戸川護岸工事の施工を担当しました。当地にはトビハゼが生息していて、これを救うため1,000尾程度を当社水産研究所に預かったのですが、90%のトビハゼが死んでしまったため、これを契機に研究を始めました。トビハゼが何を食べているかといえば、稚魚の時は動物性プランクトンの甲殻類カニの幼生です。護岸の色調、反射率、表面粗度、目地の方向、材料、角度、温度、湿度など、まさにカニの身になって護岸を見直してみました。カニの身になって考えてカニパネルを試作、1年間のモデル実験をした上で製品化しました。

当初は理解が得られにくかったのですが、それでも東京都港湾局による臨海副都心有明北地区護岸に初めて採用されることになりました。施工に先立ち、近自然型ブロックを海の中につるし1年間の実証実験を行った結果、454匹のカニの生息が確認できました。その後、14年度には自然創出による画期的技術として選定をいただきました。

カニパネルのモデル実験の中で問題点も出てきました。当初は一面に分布していたカニが、上部では逃げ出し下に行ってしまうのです。カニは50%の湿度がないと息ができない。コンクリートの乾燥が進むと生育できなくなります。そこで水を含むコンクリートができないものかという発想で、麻袋を5cm角に切りコンクリートに入れてみたら、水を重量比最大40%含むことができることが分かりました。そして、吸水・保水力が小さいというコンクリートのこれまでの課題を克服した新しいコンクリート「ウエットコンクリート」の開発につながりました。ウエットコンクリートを例えば壁面パネルに使えば、ヒートアイランドの防止にもつながります。いったん水を含むと2週間保持するため、温度を8℃〜10℃低く保つことが可能です。

こうした企業による環境技術開発には課題も多くあります。1つは環境技術評価の現状として、官側の実績主義、学問的根拠、定量化の困難さ、そして商品化してもなかなかビジネスにつながらない。2つ目として従来からの公共事業の仕組みの限界が横たわっています。それは環境の多様性と公共発注の仕組みであり、知的所有権の軽視、縦割りの中で繰り返される公募などです。そして技術開発者の苦悩があります。環境専門家による10年間の技術開発のリターンとは何だったのか。このままでは環境技術開発力は衰退してしまうかもしれません。
今後へ向けて提言したいのが、地域のことは地域に任せる仕組みづくりです。例えば、自治会・NPO・PFIなど多様な主体による自然再生の推進が重要だと思います。もう1つは環境修復の定量的目標値を設定したデザインビルド方式、つまり企業の意欲を喚起するような環境修復工事の創出が大切だと思います。

平峯

環境に関する技術を開発して、実際に今の日本で生かすことが可能なのかについて、パネリストのご意見をお願いします。

池上

今の行政の仕組みは責任が見えないようになっています。何事も平均で判断するような仕組みが以前から変わらずに続いています。それを変えていくためには、まず技術の価値を分かっている人が責任を持って訴えていくべきだと思います。

海東

行政をひとくくりにするのは難しいと思います。国土交通省が例えば道路幅について北海道から沖縄までを同じ規格で押し付けること、これには地方も困っています。もう少し地元に対する視線と深い理解が必要だと思います。これからは地方分権の時代であり、地方それぞれの行政が魂を持つようになるし、既にそうなってもいます。技術力を持った職員を抱えたり、事業をNPOなどに委ねたり、これまでとは違う組み合わせが可能になります。

花嶋

行政側それぞれの部署の人は与えられた職務のことはよく理解しているのですが、例えばごみの流れ全体を見てシステムを動かす人がいないように感じます。逆にごみを出さないようにシステムに変えろと言える立場の人がいないのが弱点なのかも知れません。

平峯

さきほど海東さんは生業の中に自然があるというような指摘をされました。そのような発想の背景について話してください。

「木質バイオで熱供給」

海東

山が荒れ、田が荒れていくという悲鳴のような話し合いの中から、山の木は持ち出して、熱として使う場所を作ろうということになりました。老人ホームの暖房、高齢者向け水中歩行プールを木質バイオマスの地域熱供給でやろうとしており、今年夏には熱料金を徴収して実施する予定です。輸入材でないもので、できることはしようとしています。木を燃やせば、回りまわって山の仕事ができ、山の木を切ることで光が当たり、生物種が生き長らえるわけです。

花嶋

新旭町のような小さな地域で、かつ有能なリーダーがいれば引っ張っていけるかもしれません。これに対し、肥大化した関西や大阪の仕組みの中で、池上さんが話されたこと(=循環型再生大阪モデル)を自分たちのこととして進められるのでしょうか。

池上絵空事であろうと、まずは仮説を立てて示すこと。このままでは取り返しのつかないようなことになるから、今の仕組みを変えるべきだと声高に発信するべきで、大きな街だからこそ私は具体的な提案として示していきたいと思います。そこには皆が既に気づいているような、いつでも・なんでも・どこでもという身近な入口があります。

平峯

大量消費大量生産は良くないといわれてきたが、一般社会経済活動の中ではなかなか浸透していないのが現実です。価値観が変わって次の時代につながる仕組みをうまくつくれるのだろうか。例えばエコビジネスが真に経済を支えるという証明がない限り、今のままでいいと言う人も多いと思います。

花嶋現状で海外から年間11億tにのぼるモノが輸入され、国内、特に都市に蓄積されています。この状況はどう考えてもまずいわけで、大半は早かれ遅かれごみとなります。次のステップに進むための見通しをいかに明確に示すかが重要だとは思います。

「産業界は舵を切った」

池上

産業界は既に大きく舵を切っています。例えばトヨタはハイブリットカー「プリウス」を発売しているし、これはワンランク上の選択肢です。植物利用の生分解プラスチックでバンパーや内装をつくっているし、カキもつくり販売もしています。海東さんが新旭町で取り組んでいることは、大都市とは関係ないように誤解しがちですが、バイオマスという面で根はつながっているのです。日本が(大量消費大量生産の仕組みを)変えられないのではなく、われわれ自身が問われている問題だと思います。

堀内

環境省の地球温暖化防止策として昨年、神戸で生ごみリサイクルのリサイクル実験をしました。1日5〜6tの生ごみを集め、発酵させ、メタンガスをつくり、燃料電池で発電するというシステムです。花嶋さんの説明資料によると、一般ごみの処理費用が1t当たり4万5,279円と出ています。富山のエコタウンで昨年4月から操業開始した生ごみの堆肥化処理の事例では苦労していますが、採算的にはやっていけると感じています。仕組みを変えればエコビジネスは十分に成立すると思います。

海東

新旭町で200世帯の集落を地域熱供給にすることを考えてみて気づいたことですが、100〜200戸のマンションであればトータルで地域熱供給、セントラルヒーティングのほうが安くつきます。そういうものにデザインや都市開発分野の人が関心を持っていただきたいと思います。都市だからこそ集約化が可能であり、環境にもよいし、おもしろいことができるのです。

平峯

最後にパネリストの皆さんから感想や今後の問題などについて、コメントをお願いします。

池上

われわれの研究「既存都市・近郊自然の循環型再生大阪モデル」では、身近なところに本来あるべき自然を取り戻し、環境負荷を減らすということ。大胆なことだとは思いますが、実践しなければ環境問題を超えられないわけです。今回のフォーラムで気になったことは、社会システムの中で自ら語ることを否定されている部分が存在しているという点でした。誰がやったことでも平均値であれば良いといった考えは、やはり間違っています。この方向なら正しいとはっきりと言い、それを客観化していくことだと思います。

海東

会場へ来る途中に地下街で迷ってしまったのですが、大阪の人の多さに驚かされます。あの大勢の人がちょっとでも良いほうにベクトルが動いたら、ものすごく良くなるし、無責任のままだったら逆にものすごく悪くなります。例えば甲子園球場の屋根に市民出資のエネルギー源をつくるとか、東京とは違う試みが必要なのかも知れません。大阪は土着の人が地域コミュニティをつくっており、高齢者はマンパワーを持っているし、そういう人たちが生きがいも兼ね楽しく環境を良くすることに関わることができる仕組みをつくれば、じつに素晴らしいことだと思います。

花嶋

きょうのフォーラムにごみコンテナーの小さな模型を持ってきました。この2つは全く違う経路で私のところにやって来ました。1つはフランス、1つはドイツのごみ箱を作っている会社のもので、異なる人からもらったのですが、容器のサイズがぴったりと合うのです。なぜかというと、国が違ってもEU全体で規格が統一されているからです。行政にやっていただきたいのはすべてを決めるのでなく、必要なところだけを決めるだけにしていただきたいと思います。

堀内

都会の若い人が地方へ行った時に「何もないな」とよく言うそうですが、私の場合は「こんなに素晴らしい複雑な世界はないな」と感じます。逆に都会はビルばかりで何もないと思います。生態系には計り知れないところがあります。今回は2つの環境修復技術を紹介しましたが、これが生態にとって本当に良いことなのかと思います。100年後にどうなっているのか、生物の側にたって見直してみる必要があります。

平峯

パネリストの方々からは貴重な発言をいただき、ありがとうございました。環境についてはビジネスとして定着しつつありますが、社会システムとしての環境都市づくりはまだ動いていないような気がします。地域デザイン研究会では、こうしたフォーラムや勉強会を今後はひんぱんに開催し、皆さんの意見を聞く中で、どんな提案ができるのか方向性を示していきたいと考えております。


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