「智頭町現地シンポ」レポート

軌道に乗る 住民主体の地域おこし

フリーランスライター 大戸修二

「住民主体の地域おこし」をテーマにした今年の現地シンポジウムが8月31日と9月1日の2日間、鳥取県智頭町で行われ、地デ研会員20人が参加した。第一日目に同町総合センターで開かれた意見交換会(=写真)では、 同町が展開する「日本1/0(ゼロ分の一)村おこし運動」などについて役場と集落関係者から取組状況が説明された。この中で寺谷誠一郎町長は「大都市ではスピードが問われがちだが、人間関係や食文化など原点を振り返り、見直す意味から『スロー』という概念をまちづくりに生かしていきたい」と強調した。

智頭町は鳥取県東南に位置し、岡山県との県境地帯で、周囲には1,000m級の山々が連なる。町面積の93%が山林で占め、主産業である林業の歴史は古く、「杉のまち智頭」とも呼ばれてきた。智頭盆地を中心に千代川流域に集落が散在しているが、町の人口は昭和30年の14,643人をピークに減少を続け、平成7年(10,082人)までの減少人口は4,561人、減少率は31%にまで達していた。

今から5年前に就任した寺谷町長は、就任当時に役場と住民の間に距離感を感じたという。町の活性化には、@交流人口を増やすAそのためには都市にない町独自の古いものに磨きをかける―ことが必要だと判断。

その取り組みの一つが大規模な歴史的木造家屋「石谷家住宅」の一般開放だった。当初は5日間だけという条件で了解を得て一般開放に踏み切ったところ、延べ1万人が来訪。これが契機になり、「町を見にきてもらおう」という意識が高まっていった。上町地区のまちなみ各戸の軒先には、杉の葉で作った「杉だま」が飾られ、住民によるガイドボランティア、清掃作業への参加なども軌道に乗ってきた。今後は商店街の活性化にも取り組む考えで、その一環として千代川に架かる橋に屋根をかけ、各種イベントができる空間づくりを計画中という。

同町が取り組んでいる「日本1/0(ゼロ分の一)村おこし運動」は、0から1、つまり無から有へのプロセスこそが村おこしの精神であるとの考えに基づき、各集落が集落(地区)振興協議会を設立、知恵を出し合って村の誇り(宝)づくりに取り組んでいる。

運動は@交流・情報交換(独自の文化・芸能を発信、村おこしに活用)A住民自治(集落の主体的な発案)B地域経営(文化や資源を見直し、付加価値をつけて外の人々に認めてもらう)―の3本柱からなり、10年間を目標にした行動計画を立てている。運動を支援するため智頭町では、10カ年で集落に総額300万円(当初2カ年は各50万円、以降各25万円)、地区に総額600万円(当初2カ年各100万円、以降各50万円)のソフト事業費を助成する。運動に現在取り組んでいる集落数は16集落にのぼる。

渓谷に囲まれた芦津集落では、特産品として辛口の酒「芦津の夢」を誕生させたほか、ごみの分別講習、間伐の研修などにも積極的。

早野集落では、おこわ、味噌など特産品や、藍染め・草木染めなどの研究にも熱心。

「女性パワーを前面に出した」のが運動を軌道に乗せたという。戸数17戸と小さな集落、新田集落では、都市との交流事業として大阪いずみ市民生協との連携が定着、農業・林業体験を中心とした交流が行われている。

今後の課題として@活動のマンネリ化からの脱却A10年後以降の活動の継続問題B集落内のコミュニケーション不足問題C役場職員(プロジェクトチーム)のあり方―などが考えられるが、意見交換会での状況説明や町内を視察した限りでは、さまざまな取り組みが周囲に注目されながら定着しつつあるという印象を受けた。

地域デザイン研究会では、今回の現地シンポジウムで得られた情報に提言などを加え報告書を作成、智頭町役場へ提出することにしている。

<現地シンポジウム参加者>

平峯、藤田、柳田、鎌田、新島、岩本、道下、高岡、小山、金城、前田、松本、奥村、中江、中出、松島、小西、村上、別府、大戸


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