主張

いきいきとしたまち、いきいきとした女性

岩本康男

台風15号は房総半島に大きな爪痕を残した。昨今、大災害の発生確率は非常に高くて、どこで豪雨災害、震災などが起こっても不思議でない。臨機な対応も、事前の対策も専門家が必要だが、どこも不足しがちだ。財源不足の上に、公務員の削減が首長にとって一番の選挙公約になるので、人材に余裕がなくなった。さらにライフラインを扱う公民とも、インフラ投資を削減せざるを得ない経済状況にある。

こういう時代に大都市を分割し弱小組織化にすれば、有能な人材が集まるはずがないのだが、市民はそれで良しとするのか。国においても、出先機関に権限を分散して改善になったのか。専門職はある程度集約して、広く多様な視野で行政判断する方が地域のためになると信じている。都市計画はThinkGlobally,ActLocallyの最たる分野なのだ。ThinkLocally,ActLocallyでは発展がない。

都市局に依田技術審議官という前例にこだわられないプロがおられた。関空の整備後、伊丹空港の跡地を関西の新しいコアにしようと提案された。実際は廃港にならなかったが、大局的に考えられた方だ。パリのラ・デファンス、ロンドンのドッグランドのような開発ができていたかもしれない。実は、咲洲、夢洲などテクノポート計画もねらいは同じであった。たんに大阪市の延長線にあるまちでなく、関西全体の発展のための核にと構想された。オリンピックなど一過性のイベントに使うのが本旨でなかったし、まして現在進行形の姿は……。

依田さんはまず高いところから都市を俯瞰することが習慣であった。大阪なら生駒山か、手近で甲山の神呪寺が私のお勧めだ。大阪平野は1,600㎢、都市圏はこれに京都、奈良盆地や周辺の都市、ニュータウンを加えたエリア,一方、関東平野は17,000㎢、四国4県より少し狭いぐらいの広大なエリアである。これと勝負するか?

京都のまち、将軍塚か京大桂キャンパスからの眺望がベストポイントだ。この街は3000万人までの首都なら対応できたが、1億3000万人の首都ならどうなった。しかも政治も経済も中央集権の時代だ。よくぞ景観が守られたとプラス思考すべきだ。インバウンドが多すぎるという悩みも今の景観があってのことである。これは何世紀も稼げると、祖先にお礼を言わなくてはなるまい。一時の儲けで開発してしまったら、どこにでもある街になってしまう。世界遺産の施設群だけでは人は来ない。周りの環境とセットで、互いに借景になって文化的空間を形成していることが魅力なのだ。 大阪もなんで「大阪都」になろうとするのか。副首都推進局なんて名前はみっともない。大阪は世界の大阪を目指せばよいのだ。

この地域が唯一無二なのは、個性的な街や文化、自然などが松花堂弁当のように複合して存在しているからだ。京阪神をはじめとした都市連携こそエリアの価値を高める方策と考えられる。京阪奈学研都市や関空などに続いて、先端産業、観光、防災等都市政策での連携を強力に推進することでトータルとして魅力を高め、人材の集積が可能となる。リクルートの調査では、大卒者の地元就業は首都圏86%、東海地域75%に対して関西は53%に過ぎないらしい。特に問題なのは女性の活躍の場が極めて不十分なことである。女性の府県別労働力を見ると、奈良県、兵庫県、大阪府がワースト3なのだ。女性が働きたいと思う企画的な仕事を創らないとこの都市圏の将来は明るくない。いきいきと女性が働くエリアを目指そう。 


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