主張

「バリアバリュー」と「バリアフリー」

前田秋夫

先日、株式会社ミライロ代表・垣内俊哉氏の「バリアバリュー」についての講演を聞いた。

「バリアバリュー」とは、「それぞれが持つ、トラウマやコンプレックス、障害は克服すべきものでもなければ取り除くものでもない。今まで「バリア」として捉えていたことも考え方や周囲の向き合い方次第で「強み」や「価値」に置き換えることができる」という意味だそうだ。

垣内氏自身は生まれつき骨が弱く小学校のころから車いすの生活であり、その中でいろいろなことに取り組んでいる、ということもあり非常に感銘を受けた。 私は、鉄道会社に勤務しており、ちょうど時代の変化の時期でもあったので、入社以来ずっと「バリアフリー」に取り組んできた。

<点字タイルと点字案内板>

入社して間もなく取り組んだのが、駅舎・プラットホームへの点字タイル・点字案内板の設置である。当時はまだ明確な設置基準がなく、関係者の意見や鉄道他社の事例を参考にしながら、当社なりの基準を定め、全駅に設置した。残念なことに、その後定められたJIS規格とは合致しておらず、駅舎大規模改修時に変更することを求められている。

<車いす対応エスカレーターとエレベーター>

次に取り組んだのが、車いす対応エスカレーターの設置である。日常は普通のエスカレーターとして利用しながら、必要な時は車いす利用が可能ということで、物理的に設置しやすいということもあり、積極的に取り組むこととなった。一駅設置したところで車いす利用者に意見を聞くと、多くの人から「やはりエレベーターを設置すべき」という意見が出された。「車いす対応エスカレーターは駅員の協力なしでは利用できない。できるだけ自分の力で利用できるようにしてほしい。エレベーターだったらそれができる」という理由だった。

この意見を受け、方針をエレベーター設置に方向転換したが、エレベーター設置となると既存駅舎の中では納まらず、増築を含む大工事となった。国の補助が付いたことで前向きに対応できたが、一駅だけ構造上どうしても設置できそうにない駅が残った。近畿大学の先生が座長で車いす利用者にも参加している検討会に参加して意見を聞いた。会社としては現実的に無理なので、車いす対応エスカレーターでお願いしたが、結論は出なかった。

何回も検討会を開く中で、新型のスクリュー式貫通型エレベーターを採用することで構造的な問題が解決できることがわかり、何とか結果を出すことができた。

<電車>

最近は電車のバリアフリー化に取り組んでいる。音声案内、案内ディスプレイ、車いす用フリースペース、ドア注意喚起シール等である。

今後もホームドアの設置等、取り組むべき課題は多くある。また「心のバリアフリー」(バリアを感じている人の身になって考え行動を起こすこと)がこれからは重要なテーマになる。

「バリアバリュー」とは障害を価値に変えるという意味だそうだ。私なりに「バリアフリー」に取り組むことが「バリアバリュー」の一助になると考えてこれからも取り組んでいきたい。


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