MEMBER'S SQUARE

旅ゆけば・・・

初めての海外出張のトラブル

星野鐘雄

30年も前の話である。自分は50歳まで海外に行ったことはなかったが、JR西が発足して2年目、欧州の鉄道視察の先発隊のリーダーを命ぜられた。営業、技術など各系統10名のメンバーが選ばれ、英、独、仏、スイスの鉄道を検分し、JRの将来に役立てる種を探してくるのが役割である。

英国の航空機で成田からアラスカ州アンカレッジ経由でロンドンを目指した。ところが給油のためアンカレッジに着陸したら長時間出発しない。位置情報のコンピューターの故障らしいが直らない。大韓航空がソ連領を侵し撃墜されたばかりなので、ソ連上空を飛ぶリスクを避けニューヨークへ迂回することになった。アメリカ大陸を横断してニューヨークへ着いたが、航空機を取り替えるのに時間がかかり一晩空港で待機した。翌朝ようやく出発し1日遅れで深夜にロンドンの土を踏んだ。トラブルをニューヨークで本社に報告したら、初めて海外に行くメンバーばかりだったので、飛行機を乗り間違えたのではないかと疑われた。

この事故は遠回り4,000㎞の旅として毎日新聞に報道されている。冒頭の行程が狂ったが、欧州鉄道の駅、車両、線路など多様なデザイン、機能、技術に眼を見張り、各メンバーが競って資料収集、写真撮影に没頭した。私のカメラがドイツで故障するハプニングがあったが、カメラを買い換えて撮影を続け、36枚撮りフィルム30本にも及んだ。ウォータールー、ハンブルグ、パリリヨン駅やTGV、ICE列車などの印象が強く残っている。

他のメンバーも沢山の資料を持って帰国し全ての情報を社内に公開した。先発隊に続き、色々な目的の視察団が海外へ派遣され世界の鉄道情報を蓄積、活用していくことになる。私達はその先陣を切ったと自負している。後に実現する京都駅、大阪駅の開発、500系新幹線車両の創出、駅ナカビジネスの展開などにヒントを与えたのは間違いないと思う。