REPORT

PJ研究会議「都市計画」討論会を開催

今こそ日本独自の都市計画を

 大阪の都市計画について「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」(温故知新)を目的に取り組んでいるPJ(プロジェクト)研究会議「都市計画」-。地域デザイン研究会は6月16日、立命館大学総合科学技術研究機構研究員・村橋正武氏、現西日本旅客鉄道建設工事部顧問・清水喜代志氏(元国土交通省都市局技術審議官)、近畿建設協会理事長・霜上民生氏の参加を得て討論会を開催した。第1部で事務局が同研究会議の成果を書籍化するという目標を述べた後、執筆予定の会員が各内容を説明。第2部「昭和及び平成の都市政策・都市計画、そしてこれからは?」をテーマにした討論では、本書の主筆となる平峯理事長が「都市計画についての問題意識と日本の都市づくり・都市造営・都市計画各論の概観」について基本認識を示したうえで、「都市に関する問題意識と現行都市計画(法)」についてプレゼンテーションを行った。これを皮切りに「都市計画は必要か」「目的は何か」など、問題意識や問題点について議論した。潮騒誌面では、第2部の概要を掲載する。

討論会出席者(敬称略)
▽立命館大学総合科学技術研究機構上席研究員 村橋正武 ▽西日本旅客鉄道建設工事部顧問 清水喜代志(元国土交通省都市局技術審議官) ▽近畿建設協会理事長 霜上民生
<地デ研メンバー>平峯悠、岩本康男、岡村隆正、小川雅司、片瀬範雄、鎌田徹、小山二生、下條章義、髙岡邦彦、友田研也、中尾恵昭、星野鐘雄、道下弘子、宮内衞、柳田保男、山部茂 

◆「合理的な都市計画」の「合理的」とは何か

 平峯理事長は「日本には都市計画はないと言われてきたが、古代都城制・国府が都市計画の原型で、江戸時代まで宿場・門前・環濠・寺内など独自の都市計画が存在した」「明治期以降は鉄道敷設等もあり西洋の都市計画が大きな影響を及ぼした。戦災復興までは街路を中心とした都市計画を行った。これこそ日本の都市計画の原型である」「日本の都市計画は都市を改良する手段ではない。連続立体交差事業などの個別事業によって都市整備できた」と概観した。

 次に、今の都市計画法の問題点として、①将来的な都市空間のビジョンがなく、合理的な土地利用の「合理的」とは何かについて議論されていない、②地域の特徴を示す歴史資源等が「その他」として軽視されてきた、③調整区域等の線引きは不要であり、いかにして廃止するかなど、問題点を指摘。「日本型都市計画の原理原則をつくらねばならない」と提起した。

◆税収、出生率、雇用を増やす都市計画を

 清水氏が主張したのは、税収と出生率、雇用を増やすこと。出生率を高くするためには、「家に帰る時間が短く、残業が少ないことが条件」で、「地域みんなが子育てを支援するまちをつくる」。税収増の視点からは、「交流人口増加によって人の活動を活発化させる、住民の健康寿命を伸長させる、地方部の雇用増、これらを実現する都市計画を考えねばならない。交通よりも交流、外見よりも活動、静的な計画よりも動的なシナリオが重要だ」と述べた。

◆計画の重要性を再認識すべき

 村橋氏は「目標の軽視(喪失)と手段化する計画」とい う視点で危機感を投げかけた。「都市計画は人々の暮らし方・生き方をつくるもの」であるにも関わらず、「計画が手段となってしまい、将来に向けてのシナリオが書かれなくなったのではないか。計画に対して、我々、とくに若い人の考え方が非常に希薄になっていることが問題だ」「右肩下がりのいま絵を描いても意味が無いとして放置しておくのか」と問題意識を述べた。立地適正化計画については、就業機会をつくることが課題としながらも、「既往の計画体系との整合を図る部分を除けば制度として論理一貫している。国はこの計画によって、都市空間論から都市機能論へ軸足を移したのではないか」と指摘した。

◆目的は有能な人材が働き定住すること

 都市経営、地域経営の観点の重要性を説いたのは岩本副理事長だ。大阪市が都市経営という観点に至った理由は、「都市計画行政だけでは組織として食べていけず、自助努力しかないから」。「大阪市は昭和38年に日本初のマスタープランをつくる際に、都市の戦略づくりを都市計画のメインに選択した。それ以来、つくるのは手段であり、計画を考えることが目標だという流れがある。理想はドイツのような地方行政に持ち込むこと」。岩本氏は、ハンブルグ市の都市計画局長から「有能な人材が働く場を確保し、定着・居住してくれる環境をつくることが、インフラ整備の目的だ」と聞いた時、目から鱗が落ちたという。

 星野鐘雄氏は、鉄道は都市施設ではあるものの都市計画の中では従属的施設だと位置づけたうえで、平成を「鉄道にとってハッピーな時代」とした。JRは東西線を含めネットワークを150km拡大し、阪神なんば線、近鉄けいはんな線も整備、新駅はJRで30程度、私鉄で1~20できるなど、都市を支援する鉄道の実績を述べた。

◆都市計画とは都市経営、福祉だ

 その後の討論では、都市計画の枠組みについて議論する場面があった。

 「今まで外れていた福祉や教育など、総合行政の窓口全体を担うべき役割として都市計画を改めてつくり直すべき」「都市計画は福祉だと考えるべき」「枠組みを取り払い、都市政策をそのまま都市計画と考えるべき」。それぞれが経験上持ち続けてきた問題意識だけあって、活発な意見交換が行われ、従来の都市計画の「枠組みを取り払うべき」という意見が多数出た。

 また、優秀な人材が働き、子育てできる大阪にしなければならないという課題については、「大阪に企業の企画部門を置く方策を経済界に真剣に考えてもらう一方で、東京本社の企業の税負担を高めるなど、極端な政策が必要」、「幸福度指数が高い北陸3県は地域で学び就職する率が高く、地場産業を進化させて地元企業が残っている。北陸3県に学ばねばならない」「大阪ではなぜできないのか」など、東京一極集中が加速する現状への焦燥感が表出した。一方で、「広島市のように、人口の移動をせき止める魅力ある都市(ダム)があれば人口流出は少なくなる」「地方都市で特定の産業が集積している地域特化の経済の場合、産業構造の変化や好不況の波が大きいなどのデメリットはあるが、東京に吸い上げられないというメリットがある」という指摘もあった。

◆「線引き」問題に賛否両論

 線引きの廃止については、「廃止すべき」「線引きを外しても土地は利活用されない」「外国人(中国人)が土地を買いまくる危険がある」「利害関係者を調整すればうまくいく」などと、賛否両論があった。 計画の主体については、推進役となる政治家や首長、経済界に、スマートウェルネスシティ首長研究会のように、都市計画を教育する場をつくる必要があるという意見もあった。 最後に平峯理事長は、「昭和41年に改正された都市計画法がどんな経緯で何を目的にしていたかを知ったうえで運用しなければならない。そこがわかってないから、現在の問題点だけを言うことになる。経緯を明らかにしていきたい」と、PJ研究会議の今後の方向性を示した。


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