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旅ゆけば

「北の大地」からの暑中見舞い

大戸修二

航空会社のバウチャー(搭乗券等引換券)利用期限が2週間を切る中で、どこへ行こうかと考えた。今年の夏、沖縄、九州、東京、どこも暑いということで札幌往復便を予約した。主目的は「北の大地で暑中見舞いのハガキを書く」。送り先リストを用意し関西空港に向かった。

4日間の日程である。とりあえず札幌駅近くのビジネスホテルに素泊まりし、翌朝8時20分札幌駅集合の「湯の川温泉に泊まる初めての函館2日間」という現地バスツアーに参加した。札幌駅前から1時間弱、バスは中山峠付近に差し掛かった。

標高835m、中山峠には懐かしい思い出がよみがえる。大学2年の夏、友人と2人で名古屋から札幌まで1,300kmの自転車旅行を慣行。あの時、洞爺湖畔を出た私たちは最後の難所「中山峠」の上り坂を、喘ぎながらペダルを踏んでいた。道は今ほど整備されておらず、「クマに出会うのでは」という不安もよぎった。じつは翌年の夏にも、私は別の友人と北海道を旅した。その時は自転車でなく国鉄周遊券を活用した列車の旅で、テントと寝袋持参の節約型。そんな旅をする連中の姿を新聞は「カニ族」と紹介していた。

バスは長万部を経て一路函館へ。車内に北島三郎が歌う『函館のひと』が流れ、ツアー客の気分は一気に盛り上がった。五稜郭、トラピスチヌ修道院、元町エリア、赤レンガ倉庫群、立待岬などを観光した。赤レンガ倉庫群の裏道を一人散策中、バイクで日本一周中の女性に遭遇、数分間の立ち話をした。23歳、職場の悩みで仕事を辞め、気分転換のため思い切って旅に出たという。「何とかなるさ」と激励した。仙台を出て9日目、フェリーで本州に渡り日本海側を走るそうだ。

バス旅を終え札幌に戻った後の最終日は、暑中見舞いのハガキ書きに没頭することにした。宿泊先の旅館・中村屋の人に聞くと、今年は北海道命名150周年。この日から3日間、天皇、皇后両陛下が北海道を訪問され、記念式典出席のほか、利尻島にも初訪問されるという。旅館の前に北海道庁の建物があり、その1階に郵便局が入っていることが分かった。「ひょっとしたら」とのひらめきで行ってみたら、「北海道150周年記念切手」があるというので、2シート20枚を購入した。チェックアウトまでは旅館で、チェックアウト後は2軒の喫茶店でじっくり、しっかりと暑中見舞いの文面を書いた。午後3時過ぎ、書き終えたハガキに記念切手を慎重に貼ってポストに投函、今回の主目的をなし終えたわけである。

後日談がある。数日後、学生時代に北海道を「カニ族」風に同行したK君から速達の手紙が届いた。文面には『…北海道150年。俺達が旅したのは100年前後の頃、あれから50年とは早いものだね。…利尻島でテントを張った時、俺はクマが来るのではと怖かった。ただ最近知ったことだが、利尻にはもともとクマは定住していないそうだ…』。思わず声を出して笑ってしまった。



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