連載企画

ゆけば・・・

何とかなるさ

大戸修二

これは引き出しの奥にしまってあった「旅日記」 の一文、26年前の1991年1月、旅先での思いをつづった記録である。

 スペイン・バルセロナで、一目散に駆け付けたメーンスタジアムは工事中だった。来年夏のオリンピック開催地バルセロナはIOC会長サマランチの地元だから、完成していると早合点したのが間違いだった。現地ガイドのH氏に聞いたら、この施設、一昨年暮れに一度は完成したという。雨漏りが発覚したついでに施設を調べてみたら、6万人収容の椅子がなぜか3万席しかなかったという。

 スペイン人は焦らない。再び工事を続けだしている。しかし、ホテルも足らないようで、闘牛場をホテルに充てようと話が持ち上がっているものの、これも未着手である。「いずれ何とかなるさ」と持ち前の明るさで一蹴するが、来年に迫ったオリンピック会期を前に、同じスペイン系のメキシコ人達が最近心配しだしたそうだ。「兄弟、ホントに大丈夫かい」

 湾岸戦争の最中、ツアー客のキャンセル続出でついに大阪空港の集合場所に来たのは私一人。添乗員なしの一人旅となってしまった。道中で機内の外人は私だけという経験もさせてもらった。また当地は参戦国であり、新聞は戦争報道が大半を占めていたし、街中各所ではパトカー・警察、空港では自動小銃を持った軍人の姿が目立った。タクシーの運転手のアルジェリア人は、目的地を通過した後も戦争問題をしゃべり続けた。そして「お客さん、どう思うかね」と質問する。返答に困って、「…悪いがUターンしてくれないか」。運転手はやっと平静さを取り戻してくれた。

 私自身としては、追い求めてきたアジアへの旅から初めて抜け出しての西欧である。街、絵画、歴史、人など、見たもの、聞いたこと、感じたことは大げさでなく書き尽くせないほどの中身だった。そして、行きたいところがまた増えたという思いである。


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