平成28年度「釜石大学プロジェクト」の報告

震災学習列車を企画して

阪神電気鉄道(株)技術部顧問 立間康裕

 「釜石大学プロジェクト」は、釜石のNPOが主催者となって3年前から実施されている“住民の心の復興”を目指した参加型の事業である。各地の大学や企業が一定期間に集中して釜石市内や大槌町周辺に集まり、講演会やイベント、住民との交流会などを行い自立への支援と連携を行うという事業である。今年は三陸鉄道との共同事業として特別列車を仕立てた「震災復興列車」を仲間と企画した。この中で列車内での「俳句講座」を担当し、釜石高校の国語教師であり、句集「龍宮」など5冊を出されている俳人・照井翠先生をお招きし、震災当時の話しを含め講演をいただいた。8月18日~22日に参加したが、期間中には新潟県、三重県、神戸市などから大学生を含め40人余りの参加者を得て、学生達への伝承にも貢献できたと思っている。以下に2つの事例を紹介します。

■「恋し浜」ツアー/三陸鉄道「南リアス線」


北リアス線 車窓からの眺め

震災学習列車 (クエートから寄付された豪華な特別列車にて)

説明をする佐々木さん(後ろの堤防は高さ13m)

 (8月18日(木)17:00~19:00)

 釜石駅から約30分の「恋し浜」駅は、もとは「小石浜」という駅名でした。この辺りは高台を通っているため津波の被害は無かったが、漁港や低い集落は大きな被害を受け、海も瓦礫などで相当汚れているそうです。ボランティアと共に海に潜り、これまでも湾の清掃をしつつ、今はホタテ貝の養殖で生計を立てている漁師の佐々木さん。仲間と一緒に「ホタテデッキ」をはじめ、観光資源としての整備計画も立てておられます。

■「震災学習列車」/三陸鉄道「北リアス線」

 (8月19日(金)8:00~18:00)

 三陸鉄道から震災当時の運転手に来ていただき、被災当時の状況や地震・津波の対処などについて約40分間、資料を交えて説明を受けた。乗客の安全を予測するとっさの判断の難しさは臨場感あふれる内容でした。また、津波による被災を詠んだ句集「龍宮」からの朗読や、被災後1カ月を高校生達ともに生活した教師としての話には、思わず涙が出てきました。

 内容の代わりに、震災当時、約3年後、5年後の照井先生の俳句をご紹介します。

震災当時: 

春の星こんなに人が死んだのか(龍宮より)

双子なら同じ死に顔桃の花 (龍宮より)

3年半後:

別々に流されて逢ふ天の川

手花火の何か言ひかけては尽きぬ

5年過ぎ:

滅亡の文明ほどに土盛らる

蛍(ほうたる)や握りしめゐて喪ふ手

 参加期間の後半は、「釜石こども園」の先生方へのセミナーに参加すると共に、花巻や遠野周辺の地域文化に触れながら、来年以降の継続や企画案などの意見交換をし、台風接近のなか帰阪の途についた。


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