REPORT

都市計画研究会が討論会

新たな「都市計画のあり方」提示が目標

  今年1月のプロジェクト研究会の成果を受けて発足した「都市計画研究会(主査:村橋正武氏、座長:平峯悠氏)」の初会合(討論会)が、5月30日に開催された。まちづくり・都市計画の専門家集団を自負する地域デザイン研究会として、成就社会における新たな都市計画のあり方を提示することを目標に、さらに広く都市計画の専門家の参加を呼びかけて、「関西からの都市計画の挑戦」として議論を深めていくことにしている。この日の討論会では、都市計画に関する7項目(=別表)について意見交換した。また、岩本康男氏からは「都市計画の今日的テーマ」の提案があった。討論会の一部(①大阪都市構想への評価)と、岩本氏の提案を掲載する。(文責:大戸修二)

■1月までに4回開催を予定

  都市計画研究会では今後、大阪都市圏を対象とした下記の6つの検討項目について、研究項目の担当者からたたき台の提出を求め、議論・討論を行う。その中で統一見解をまとめるとともに、異なる意見も併記していく。研究会は今年6月から来年1月までに4回程度開催、来年(平成28年)2月頃には公開討論会を開催する。その後、公開討論会の成果として「都市計画のあり方」(提言)に結びつけるとしている。

  資料:第2部 都市計画に関する討論会 討論項目

<大阪都市圏を対象とした検討項目>

  1. 立地適正化計画と現行都市計画法

  2. 大阪圏における都市構造の類型化と都市計画

  3. 都市計画と私権の制限

  4. これまでの都市論を検証

  5. 都市計画・都市づくりの主体

  6. 都市計画・まちづくりの事例分析

①大阪都構想への評価(主な意見)


平峯理事長(左)と進行役の岡村氏(右)

A:都構想での「政令市廃止」は地方分権の流れ方として逆。否決されて一安心した。

B:都構想での「高速道路・鉄道交通網など広域行政課題は『都』が取り組む」ことは理解できた。

C:本来都道府県は調整役として重要だが、権限はわずかでよい。

D:まちづくりの観点から、都市の規模はむしろ大阪市程度がよい。府全体的に考えると大き過ぎる。都市行政の適正規模を含めた具体的提案がほしかった。

E:反対優位の決め手となったのは財源問題と都市計画権限問題。その制度設計が不足していて、もっと議論すべきだった。

F:府知事がきっちり攻めるのなら、合併や道州制を積極的にやるべき。攻める方向が間違っている。内部のお金争いでなく、広域都市としての在り方を求めるべき。

G:政令指定都市が増えすぎて、中には過疎対策をしなければならないところも出てきた。

H:指令都市の在り方をもっと議論すべき。

I:東京と大阪の鉄道ネットワークの差を痛感しているが、東京は与党が強く、大阪市、大阪府は野党が強くて協議が難航。それに比べ東京は1つだから進めやすいのではないか。

J:以前は東京都が都市計画権限をとっていたが、今は特別区に下ろされているため、協議をしなければない。都心3区は財源を持っているため、言うことをきかないことにもなる。

■「都市計画の今日的テーマ」

岩本:都心の都市計画について触れたい。


「都市計画の今日的テーマ」を説明する岩本氏(中央)

●何が問題か

  発展途上国の都市問題のキーワードは交通、住宅、環境で、さらに最近はエネルギー(水と電気)の問題が出てきた。それを大阪に置き換えると、インフラ不足はほとんど解消された。街路、公園は大幅に計画変更(減少化)され、一気に進捗率は向上。新たに追加するニーズはなくなっているのかもしれない。鉄道客も減少、鉄道各社は不動産で稼ごうとしている。つまりインフラ不足の時代ではなくなった。ニュータウンの人口減少、空き家問題から見ると、住宅不足の時代でもない。環境問題もほとんどなくなったことから、日本の従来型大都市問題はほぼクリアしており、伝統的な都市計画として何をするのか。

  大阪都構想では財源と都市計画権限が議論の的となった。これは金がない時に都市経営をどうするかという観点にきている。今の大阪で一番の問題は、仕事がないこと。それは頭を使う、大学を出てから勤めたいというような就職口がないことだ。1990年代後半から大阪市がずっと悩んでいる問題であり、これを解決しなければならない。企業誘致、特区、容積率緩和、大学誘致などへの動きは、頭を使うクリエイティブな仕事を増やすことを大目的とした施策である。今回の大阪都構想の最大の問題が、金がない中で貧乏人同士が結婚しようというわけで、東京都の場合とは違う。東京都のように変わるなら24区全てが賛成しただろうが、貧乏人同士が金を取り合うようでは賛意が得られない。だから公物管理、公共交通管理、公園管理などを民間に委ねようとか、急にエリアマネジメントの問題が出てきたのも、役所に金がない、役所だけではできないからだ。

  一方で金を稼ぐ、税収を上げることを考えると、需要喚起をするしかない。大阪市の場合なら不動産価値を上げること。容積率緩和策などは都心部の不動産価値が上がり、床が増えて固定資産税が増える。ちなみに大阪市の税収は6千数百億円で、その50数%は固定資産税、都市計画税で占める。最も稼いでいるのが都市計画で、私の在職時代、「稼ぎ頭は我々(都市計画)」と言っていた。都市計画の最大の目的は、金儲け、税収アップ(表向きは雇用対策・雇用創出)にあった。

●どうするか

  都市計画で今考えるべきことは人づくりだと思う。都市を分かり、都市経営ができる人材をどうするかだろう。橋下さんが言うように、法定都市計画は誰が決めるのか、責任を明確化しなければならない。時間をかけて都市計画決定をゆっくりやるような時代ではない。残念ながら、今や都市計画の仕事だけでは組織が持たない。どんな仕事と組むか。昔はマスタープランということで企画と組んだが、今やマスタープランをつくる時代でない。首長が決めるという、政治優先の時代になったからだ。手っ取り早いのが建築指導と一緒になることで、「まちづくり」として合体できる。建築屋と土木屋の問題はあるが、全国の指定都市では建築指導と合体しているところが多くなっている。その他に区画整理や再開発の市街地整備事業との合体、公共建築・公営住宅部門との合体、街路事業との合体、公園事業との合体などが考えられるが、これらをどんな組み合わせで仕事をすれば、人材が向上し、組織がうまく回り、都市が良くなるのか、そのことを考えるべきではないか。それは大学での都市計画の教え方にも影響してくるのではないか、あるいは都市局の在り方にも影響してくるのではないかと思う。

  法定都市計画では食えないから、最近は「まちづくり」という名称に変わり、どの組織にも「まちづくり課」、「まちづくり室」ができ、軟弱になっている気もする。「まちづくり」なら区役所で十分できる。法定都市計画では飯が食えないから、「まちづくり」をどこまで取り込むかの視点が必要だろう。

●劇薬

  余談になるが、昨年出生した赤ちゃんは100万人。ここ数年100万人程度だという。このままで進むとしたら、国の人口は減ると思う。「人口減が国の衰退を招く」と仮定すると、女性や高齢者にどんどん働いてもらうか、外国人をどんどん入れるかしかないと思う。大阪の都心で究極の特区(女性・高齢者特区、外国人特区)など、東京に特例を認めないような特区を導入できるのなら、よりクリエイティブな創出ができるのではないか。私自身の夢として、そのように思っている。


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