主張

時代とは何か、時代とは我々である

友田研也

 「自治体2040年に半数消滅の恐れ(日経)」、「896自治体で若年女性人口5割減(読売)」、昨年5月の初め、増田寛也さん(元総務相)ら民間有識者でつくる日本創成会議の提言が全国紙の一面に躍り、大きな反響を呼んだ。少子化や人口移動に歯止めがかからず、子どもを産む人の大多数を占める“20~39歳の女性人口”が2010年から2040年にかけて5割以下に減る自治体を『消滅可能性都市』として公表し、早急な人口対策を促した。これを見みると大都市も例外ではなく、大阪の4市4町1村に加え、大阪市の複数区も上がっている。続けて、若者に魅力のある地域拠点都市を中核とした「新たな集積構造」を構築し、地方から大都市への若者の流れを変え、「東京一極集中」に歯止めをかけるべきと提言している。 一方、コンパクト化を実現して農山村集落からの撤退を進めるべきという上記提言に対し、明治大学教授の小田切徳美さんは、若者のIターンや田園回帰の新たな動きが評価されていないことを指摘。「田園回帰」は今やリタイア組の動きではなく、過半数が40歳代以下で約7倍に増えていることについて、若者が地方に向かうニーズ、実数などの全体像をつかみ、成功している市町村のノウハウを学ぶ必要性を説いている。

 翻って、広域的な視点からみると、経済のグローバル化、産業の知識化が進む中、わが国三大都市圏の一つを担う大阪都市圏として、国際競争に打ち勝つ強い大阪を築いていくことも重要である。米国の社会学者リチャード・フロリダは、世界のクリエイティブな人材は、有望だと思える巨大都市圏「メガリージョン」になだれ込んでいて、このメガリージョンが急速に成長しているという。東京都市圏、ボストン・ワシントン都市圏、ロンドン・マンチェスター都市圏など、世界には40ほどのメガリージョンがあり、世界経済活動の3分の2を動かし、世界の技術革新の85%を担い、世界人口の18%が住んでいるという。リニア中央新幹線で、東京・大阪間が1時間で結ばれるようになると、わが国の三大都市圏は世界一のスーパーメガリージョンになり得るとの示唆もある。 また、リチャード・フロリダは、経済的な危機が起こった場合、古くさいシステムや習慣が捨て去られ、新たなイノベーションが花開き、30年ほどをかけて都市構造を改変して経済や社会を蘇らせる『グレート・リセット』が起こるとも説く。第一次リセットでは、1870年代の長期不況の後、電力、交通機関、学校教育といった新しいインフラが生まれ、大規模な産業都市が誕生し、農村から都市への大移動が起こった。第二次リセットでは、1929年の大恐慌の後、道路・ライフラインの充実、自動車の普及により、都心から郊外居住へとライフスタイルの変化が起こった。その後、共に新たな経済の成長をもたらしている。

 今は、第三次リセットに向けての準備期間だという。地方自治体の財政状況は逼迫し、リーマンショック後の経済情勢は依然として厳しく、人口減少・少子高齢化が現実的な課題としてのしかかってきた。IT技術が生活の手段として個人に行きわたり、物流が各戸を対象とするものへと様変わりしつつある。かつてステータスシンボルであった車や家を熱望しない「ニューノーマル」と呼ばれる暮らし方も現れてきた。新たな時代に対応した、新たなイノベーションが求められている。それは、小手先の改革を繰り返すものではなく、抜本的に仕組みを変えるものでなくてはならない。組織が大きくなるにつれ、人が年齢を重ねるにつけ、とらわれは強くなる。そこに若い者を呼び込む意義があり、若い者の役割がある。敷かれたレールは既に無く、若い者、次なる時代を担う者が、よく考え、新たな仕組み、新たなライフスタイル、次なる時代を見出していかなくてはならない。

 「長崎さるく博」のプロデューサーであった茶谷幸治さんを地デ研の総会にお招きした際に、我々に向かって「時代とは何か、時代とは君たちである」と言われたことを思い出す。


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