主張

ポスト巨大ステーション

星野鐘雄

 大阪ステーションシティ、阪急デパートに続きアベノハルカスの開業で大阪が沸いている。鉄道会社の開発した巨大なビルは、商業施設のほかに人が集まり憩い交流する広場など多目的な空間を提供しているため、沢山の市民を惹きつけるのだと思う。駅と駅ビルが都市を形成していると言っても過言ではない。そして都市的な駅の賑わいは今ピークを迎えているのかも知れない。

 一方、鉄道には駅と共に路線という施設がある。これからの路線の形態はどう変わるのであろうか。最近、第3セクター泉北鉄道を運営する大阪府都市開発の株式を外資に売却する案が反故になり、南海電鉄に売却する計画が実現する気配になってきた。乗り継ぎ運賃を10円下げる外資より、80円下げる南海を多くの市民が支持したからだと報道されている。その売却資金を財源に北大阪急行の箕面延伸などの新線を建設する計画も実現味を帯びてきた。

 このニュースは都市鉄道の将来の2つの課題を提起している。

 このようなことを考えている時に、先輩の鉄道人から衝撃的な論文<※注>をいただいた。100年後の首都圏の鉄道利用者は半減し、混雑緩和の必要はなくなる、いかに安全で便利で低運賃の路線を維持するかが題。このような長期的視野に基づき、近未来の首都圏の都市鉄道の政策を策定すべきだという提言である。人口集中している首都圏においても、新線ではオリンピック関連の鉄道などしか計画はない。大規模な新規路線の整備の時代は終焉したのだろうか。

 片や関西圏では、この25年間に約150㎞もの鉄道路線を新設してきた(首都圏は約200km)。さらには、利便性を高め都市の活性化に役立つと考えられる未着工の新線計画を実現する動きが出てきている。南海とJR西日本の列車を相互に乗り入れするなにわ筋線(東京の中央線的機能)や放射状の鉄道路線を横に連絡する大阪モノレール線、地下鉄四つ橋線の新大阪延伸、北大阪急行の延伸などの計画である。

 超高齢化時代になると、マイカー運転が困難になり便利であれば公共交通を利用する高齢者が多くなると予想される。便利性の中でも高齢者は交通費の自己負担者が多いので利用しやすい安い運賃を望んでいる。

 3セクの鉄道の多くは、高度成長の時代に高金利の借入金で建設したため高い運賃を設定している。乗り継ぎをすると運賃は併算されるので通算にくらべ異常に負担が大きくなる。現在関西の初乗り運賃はJR120円、大手私鉄150円、大阪地下鉄180円に比べ、3セクは90円から360円まで幅があって高運賃の会社もある。

 上記の論文でも、首都圏の運賃の高い3セク鉄道の存続に警鐘を鳴らし経営統合などの改革を提言されている。

 関西ではすでに新線建設主体を電鉄会社が統合して新線の加算運賃を抑えたり、新線建設と運営を別にする上下分離方式にして通算運賃にした例がある。近鉄の東大阪線、京阪の鴨東線やJR西日本のJR東西線、大阪東線などである。

 しかし、多額の債務を抱え高運賃のため利用者が減少し経営困難な3セク鉄道も存在する。累積損失、長期債務を軽減し低廉な運賃にして高齢化時代に存続できる経営形態に改革するのが都市鉄道の大きな課題である。 都市鉄道路線存続の試金石と考えられる泉北鉄道の経営改革を期待したい。あわせて大阪市営地下鉄の民営化の動向も見守りたい。

※<注> 高松良晴氏(元東日本旅客鉄道副社長、元鉄道公団副総裁)『長期人口減少期を迎える東京周辺の都市鉄道<ポスト運輸政策審議会答申第18号への提言>』「交通と統計」34号


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