人口減・超高齢化・少子化社会への対応

~基本的なスタンスを明確に!~

平峯 悠

 私達日本人が、人口減を経験したのは昭和20年の一度きりで、大東亜戦争敗戦直後の特殊な時期のことである。以後人口等は急激に増加し続けてきたが、2008年をピークに減少に転じ、人口構成がこれまで経験したことのない状況に変化していくことは紛れもない事実である。問題とされているのは、年金問題、生産従事者の減少、需要の減少による経済の沈下、空き家や地域の空洞化、公共交通(鉄道・バスの経営悪化)の衰退、限界集落や買物難民の発生及び医療崩壊などである。

 日本の人口は現在約1億2700万人であるが、これが50年後に8000万人程度になると推計されており、誰も経験していないが故にその受け止め方は様々である。人口減少等に対する見方は大別すると、一つは、昭和25年(65年前)の8400万人からみればそれほど問題視しなくてもよい。生産人口減は女性や高齢者でカバーすれば問題なし、これまでのシステムを修正すればよいという比較的楽観的な見方である。私達の日常生活でも、高齢者は増えていることは実感するがその他のことは切実に感じることは少ない。一方では、現在の社会システムは人口急増の成長期に作られたもので超高齢化を伴う人口減社会は完全に機能低下に陥り、国家財政から日常の暮らしまでが崩壊するという危機的な状況にあることを前提に、社会全体の根本的改革を行わねばならないという考えである。年金問題、介護医療の実態をはじめ、地方都市や農村集落では既に深刻な問題が発生している。 東京・大阪をはじめとする大都市圏では、人口構造の変化をある程度吸収する余地があるように見えるが、日本全体で見ると極めて深刻であるといえよう。まちづくりにおいても人口減や高齢化によって引き起こされている問題としては、地方部での限界集落の増加や買い物難民の顕在化、都市部での空き店舗問題や駅前駐車場等に 見られる中心市街地の衰退、大規模ニュータウン等の空き家の増加、利用されない公園、閉鎖に追い込まれる近隣住区店舗あるいは高速道路の利用台数の減少、鉄道・バスの利用客の減少等、これらはここ数年顕著になってきた問題であるが未だ明確な答えがない。この傾向がさらに続くと考えると、早急に真剣な議論を展開し一定の方針・方向を見いださねばならない。

 超高齢化を伴う人口減社会で最も問題なのは、社会の成長が止まり停滞する、それを「是」とし昔の生活に戻れば良いというような考えや気持ちが世間に蔓延すること、その結果、困難な事案に積極的に挑戦し解決のための確固たる信念を持つ人材が少なくなることである。これまでの20年およびデフレ経済の中では、そのような傾向が現れ始めていた。

 結論として人口構造の変化に対する基本スタンスとしては、①成長は人間社会の本質的欲求であることから更なる経済成長と効率化および地域の活性化を断固追求していくこと、②その成長を支え豊かさを実現する基盤として生活インフラ(道路・鉄道、エネルギー、情報、自然環境など)の重要性を再認識し一層の充実を図ること、③国・地域を創り上げてきた伝統、文化、歴史を尊重する、即ちアイデンティティーを鮮明にすることである。それらを前提に具体的にはどのような地域が人口減・超高齢化の影響を受けるかを精査し、問題となっている事象の解決のために現在の制度や仕組み、事業手法を大胆に変えていくこと等が必要である。 都市計画としてはコンパクトシティー論が一つの試みとして注目を集めているが、人口減社会に対応した施設立地や人口密度、それを支える交通のあり方等(安易なクルマ社会への反省を含め)を原点に立ち返り議論しなければならないと考える。


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