討論会「今後、地域デザイン研究会はどのような活動を目指すか」

〜人口減・高齢社会における都市・地域づくりを考えるにあたって〜

 地域デザイン研究会は5月25日、2013年度通常総会を開催。総会後の第2部として、人口減少・高齢社会における都市・地域づくりに対し、地デ研活動の方向性を探ろうと総会出席者による討論会を行った。前半は当研究会アドバイザーの村橋正武氏(立命館大学総合科学研究機構上席研究員)と理事長の平峯悠氏が問題提起。それを受けるかたちで討論会に移行した。要約を掲載する。
(文責:鎌田徹)

◆村橋氏による問題提起

「人口減少社会における都市構造の方向」 

 日本では、戦後の復興期から引き続く高度成長期にかけて、人ロボーナス(15歳〜64歳の生産年齢人口の特出状態)をてこに、都市域の拡大を目指した都市づくりを推進してきた。しかし、

  1. 今後起こる人口減、とりわけ生産年齢人口の激減(2040年でピーク時の70%)

  2. 将来発生が予想される南海トラフ巨大地震に起因する大規模災害

などに対応するためには、これまでの理念と方策とは異なる考え方に立った「定常型社会での都市づくり」に取り組まなければならない。

 その施策として、

が必要である。 しかし、これらの施策は人々の住まい方や生活観、生活行動パターンを大きく変えることにより実現するものであり、その効果が目に見えるまでにはかなり長期間を要する。長期的に豊かに繁栄する社会を維持するには、社会システムの合理化、効率化と共に、様々な先端技術を活用して都市づくりの命題に応えることである。

◆平峯理事長による問題提起

「私たちは何を考え、どのように行動すべきか」

 過去の歴史上での都市の現状を知り、評価する。その上で未来・将来を描くこと。現在の多くの人達は、過去の蓄積をほとんど認識していない。

<過去の歴史から都市の現状を知る>

<未来・将来を描く>

@道州制など国土の再編、

A歩いて暮らせるまちづくり、

B公共交通の充実、Cクルマ社会の見直し、

D統治機構を再編する。

◆討論会

■人口減少の問題点は

岡村: 21世紀を迎えたわが国の都市は、お世辞にも美しいとは言いかねる惨状にある。村橋: 人口減だからといって、豊かさを追求することをやめること、一人一人の心の持ち方が問題である。平峯: 地域で頑張っている人がいる。陶芸をやったり,パンを焼いたり、外国に売ったりしている。

片瀬: 70歳以降どういう生活をするか、老人ホームでケアされるだけでよいのか。生きがい、互いにケアをするようにならないか。

平峯: 団塊の世代は大企業で活躍した。それはこの50年間だけの話。その前の世代は「旦那文化」をやったり、農業をやった。今は生産構造を変えて、その結果苦しんでいる。再び生産構造を変えてしまえばよい。

■ピンピンコロリのまちづくり

村橋: 研究者のある人が、ロゼットミステリー、ピンピンコロリがいいのだと。そういうまちが実際にあるという。アメリカのペンシルベニア州のロゼットという町。この街で亡くなった人の死因を調べてみると、ほとんどの人が老衰だという。調べてみると、生活環境とか、周りの人とのコミュニティとか、いろいろあるようだ。人間一生の話をするべき。ここから、歩くということを基本としたまちづくりも有効になってくる。

■生産年齢人口と鉄道事業

岩本: 生産年齢人口の減少で最も打撃を受けているのが鉄道事業者。関西5私鉄は20年間で、年間25億人から18億人に減っている。阪急や京阪が値上げもせずに頑張っているのは不動産で食っているから。人々が豊かさを求めている証拠だろう。

■都心に住み、郊外に働きに行くスタイルを

岩本: グランフロント大阪。当初は、知識人達が業務の交流でそこへやってきて、そこで買い物をするという思惑もあったが、今のところ、客は物販や飲食を求めてくる人が多い。今までは真ん中の一番コアなところにビジネスがあって、郊外に人が住むということだった。私見だが、都心に人が住んで、郊外に働きに行くというこれまでとは逆のスタイルはどうか。都心に住めば、便利で豊かな生活ができる。シカゴでは都心の人口が増えて、朝、クルマで都心から郊外へ出かける人のほうが、都心に流入してくる人よりも多いそうだ。

平峯: インフラを考える際に、従来からの状態を前提に置いた。都心には強力な業務機能とか、商業機能が集中している状況、昔のシカゴ学派のような都市計画を守ろうとした。岩本さんの話だが、それならば逆に働くインフラをつくればよい。いろんなものをガラガラポンで変えてしまう話もあり得る。

村橋: 都心に業務でなく人が住むという場合、そこへ持っていくメカニズムはどう考えるか。

岩本: 用途地域、公開空地などを、地方で自主的に決めるような施策をとっていけば可能だと思う。容積制度はやめて、高さ制限だけにする。

松島: グランフロントの話だが、便利な商業施設を支えている消費者は誰かというと、売り上げに占める購入者等の人数でいうと、都心で働いているサラリーマン、OL、法人が買うというのが4割ぐらいある。逆転させてしまうと、やがて、今郊外にあるショッピングセンターのように、できるだけ、残るだけみたいなことになってしまうのではないかと思う。

■高松市丸亀町の再開発

平峯: 地デ研で高松へ行った当時、あそこに大きな商業床をつくる、再開発は成り立つのかどうかと、はなはだ疑問だった。しかし、やってしまった。グランフロント大阪では、できると思っていたが、それを変えようとするのはおもしろい発想だ。

前田: 高松市丸亀町商店街がうまくいっていたのは、商店主がそこに住んでいた。商店街の売り上げの4割は、商店街の住人による買い物で占められ、それで繁栄していた。しかし、経済成長の頃に商店主が全部郊外の家に引っ越してしまった。住んでいた店を貸してしまったというのが衰退の第一歩。それをやり直そうということで、無謀にも500mの間を全部再開発してしまおうという。今のところ、何とか行けることになっている。

■生活の安心

前田: 団塊世代には、20年30年後に不安のないように生きるために、いくらの蓄えがあればよいかという不安がある。それは、社会福祉や政治でカバーできてないから不安になっていると思う。一世代前は、生きるぐらいは何とかなるという、生活に対する自信があった。最終的に困ったときに生きていくベースがなくなったということが問題だと思う。考え方や生活感を変えないと、いつまで経っても、自分の一生という意味で幸福感は感じられないのと違うか。

村橋: 団塊の世代は、高度成長時代にものすごい不安があった。それを何で解決しようとしたかというと、社会の豊かさを追求すること、それなしには個人の豊かさも実現できないという思いがあった。今言われているのは個人の豊かさだが、社会が豊かになって、個人の豊かさが追求できるようになった。

平峯: 個人の不安は考えたことがなかった。働く場所があって、その責務として何かをいいものにしたい。結果的に今の生活もある。

松島: 経済的に豊かさを求めてきたときに、経済的な空間的な豊かさにとどまっている。本当は、これが豊かで幸せな生活ですよということを我々が検討し、提言していくことはできるのではないか。

■街と社会基盤のあり方

岡村: NHKBSプレミアムの番組「世界ふれあい街歩き」で紹介されている西洋の都市。人口20万人ぐらいで、それなりに街路も建物も整っていて、地域の経済があって、それぞれが支え合いながらの豊かなまちであり、幸せな人たちが住んでいるような気がする。成熟社会になってくれば、ローカルな経済、ソフトな経済になってくる。日本でも、もう少し地域で豊かな暮らしができるような、社会基盤をつくっていくことが望まれるのではないか。

平峯: 西洋はまちも美しく、みんな頑張っている。それを見てきても、日本で実現しようと頑張っていない。美しくするための基本は何か、みどりの配置はどうか、そのようなことへの考え方を整理していない。また、 ヨーロッパの鉄道がなぜあんなに安くて利用者が多いのか、豊かなのか、税金を投入しているから、仕組みを変えなければいかんのか。日本だけが特殊なのか。いろんなポイントで整理しないといけないと思う。

 例えば第二京阪。環境がどうとか無駄な公共投資とか、いろいろ言われたが、できてみると第二京阪を利用して宅配の配達範囲をものすごく広く設定されたり、直通バスができたり、人がどんどん集まってくる。無駄な公共投資では全然ない。企業などが豊かになろうとして立地し、雇用を生み出している。例えば優れた遊歩道を1本つくれば、そこから豊かなものが生まれる可能性がある。

■グレート・リセット

友田: グローバル化にともない「強い大阪」をつくろうとしている。世界の人口は2050年ぐらいには70%の60億人が大都市に住み、世界で40ほどのメガリージョンに集中する。グレート・リセットの第1は1870頃の産業工業化。第2は1929年の大恐慌、第3が2008年リーマンショック。これは30年かかるといわれている。このライフスタイルをどうつくっていくかが課題だと思う。

村橋: 広井良典の論、1848年頃、ミルの想定した当時のイギリスは、工業化の入り口段階で、なお農業が中心の時代であった。農業の基盤をなす土地の有限性から、やがては経済の限界点に達する。しかし、実際には資源・エネルギーを大量消費する産業革命により、経済の中心は農業から工業に移り、土地の制約から離脱する形で成長した。

 それから160年を経て、地球規模の資源・エネルギーの限界に直面しつつある現在、根本的な意味で定常型社会の構想を考えるべき時代に入った。定常期には生産過剰ないし需要の飽和の結果、主たる関心が「人」に移り、労働集約的な生産・消費パターンが優位になる。物質的・量的拡大から、内的な深化や文化的発展・充足の重視へと移る。このような意味で考えているのなら、理解できる。

平峯: リセット、グローバルということを前提にして、日本の社会を考えるのか。大阪市の一部地域の政策について、その理論を適用するのは理解できるが、京都、兵庫、奈良、和歌山を考えた時に難しくなるのではないか。

友田: メガリージョンで関西圏を考えていく。

平峯: 道州制について兵庫県は絶対入らない。議論しようとするのは理解できるが、実現は不可能だろう。

友田: 大阪だけよければいいというのではない。関西大環状ぐらいの中で考えていく。

■企業が環境の変化に追随していく

星野: 横浜の市長が保育所の待機児童をゼロにした。女性が働ける環境を整えようとしている。少子高齢化、人口減などの環境の変化にきちっと追随していけばは崩れない。国鉄からJRに変わり、駅を整備してお客様が増え、ICOCAも30年以前から考えてはいたが、JRになってから実現した。駅に託児所を設ける、バスのターミナルやタクシーの乗り場を設けるなど、世の中のニーズの変化に応じてきた。コンパクトシティを目指して駅周辺にマンションをつくっている。駅という経営資源を環境の変化に応じて積極的に改良しているのが好例である。

■地デ研活動の今後のあり方

岡村: これまでの話の中で出てきたキーワードとしては、@本当の豊かさはあるはずAこれからの住まい方と社会基盤B高齢社会をいかに豊かに生きていくか。こうした中で、地デ研として何をすべきか、何ができるのか。

■受託業務

宮内: リタイヤしても、活躍する場所を探していこうとする人はいる。委託があれば、受けることはできるはず。河南町の業務にしても、地デ研で受けることは十分できると思う。

村橋: 今の話は大賛成。社会との接点があって、個人の生活のためではなく、自分たちが集まって社会をどうするかということを考える場があって、(河南町の案件のような)機会があれば、それで活躍する。素晴らしいことだと思う。

井上: 大阪府を中心として、現役からOBまでがそろっているので、府下の市町村関連の業務をやるようなことを進めてはどうか。私の場合、技術士の会を立ち上げて、各自治体の支援、具体的には監査の指導をするようになった。事業としても回り出した。

岡村: 河南町などでやっているが、人のつながりでうまくいく場合に限られている。

小山: 60歳前後、70歳前後を中心として回しながら、もっと若い人も入れてNPOの看板で受けて、仲間の業者の協力も得て実行していけばよい。儲ける話ではなく、100%の諸経費はいらないので、1000万円の受注で1000万円以上の仕事ができると考える。若い人も参加してくるはず。

■もっと発信を、連携や独自提案の重要性

井上: 地デ研はいろんな取り組みをするが、あまり外部に発信することはしていないのではないか。地域デザイン研究会の話を出したときに、ああこういう活動をやっている団体かということが分かるようにすべきだろう。

松島: 10周年記念誌を使って、こういうことをやってますよというアピールはできる。

平峯: 10周年記念誌を図書館に置いてもらったが、反応は今のところ不明。よいこととは思うが、発信のやり方が分からない。

岡村: 枚方土木管内のまちづくり担当者に集まってもらって、理事長に講演してもらったが、その後の反応がない。大戸: 別のNPOの活動で、子供たち向けに資料をつくって小学校に持ち込んだことがある。何事も大上段に構えるのでなく、例えばまちづくりを分かりやすく伝えるためのキ−ワードを考えるのもよい。そのために最初は地デ研内でワークショップをして、次に外へも広げていくようなステップを考えてみてはどうか。

星野: PFIがあるが、インフラの整備は官と民がうまく連携すればできることが多い。民間に責任と権限を持たせれば、判断のスピードが早い。

松島: 30〜40年後に起こりうる大変なことに対し、今から対応を考え、提案をしていくことがあるのではないか。例えば東大阪新都心の例。うまくいっていないが.これをどうするかということを提案できると思う。

平峯: やろうとしてもやる人がいない。学者も、断面だけで総合的に考えないから難しい。土地利用の大転換をはかるということの発想がない。

松島: 完璧でなくとも、何か変わるきっかけを与えるというような提言ならできるのではないか。

岡村: 今回の討論会ではまとまりきれなかったが、事務局会議を早急に開いて、まとめていきたい。


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