私の一冊

イギリス近代史講座

川北 稔著 講談社発行

推薦者:小西道信

 長距離電車が一緒の同僚曰く、「タイトルは堅いけど産業革命の見方が変わるよ」。積ん読期間があった。しかし読み始めたら、がぜん面白くなった。

 「十五でねえやは嫁に行かない」イギリスの生活文化。著者は、「世界で最初の工業化が、なぜイギリスで起こったのか」という問いかけを、技術革新や資本形成や労働市場の従来の観点から、「作られたものが誰に、なぜ買われたのか」という問題に立直す。工業化の問題を、家族構造の変化や都市化に伴う生活の変化の問題として解く。そして庶民の生活基盤が農村から都会に移ることで何が起こったのかを発見する。

 また「産業革命の故郷」が、なぜストライキと失業の「イギリス病」の国となったかの問いに、イギリス衰退論争を紹介しつつ、経済成長とは何なんでしょうかと投げ返す。「成長」がなければそれは「衰退」なのか。近世都市の成立以来、500年にわたる「都市化」のプロセスは、われわれの生活行動を「経済成長」に結びつける役割を果たした。事を生活文化という観点から見れば、つまり、消費者の側から見れば、成長を推進してきたのは都市化そのものなのです。と、結びます。

 イギリス産業の勃興から「衰退」までを圧縮したような、日本の産業の有様。「経済成長」とは異なる指標を掲げる時期に来ているのではないでしょうか。


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