主張

今こそ政治家の出番

平峯 悠

  16の政党が乱立した衆議院選挙は自民党の大勝に終わった。日本の進路を占う選挙と言われたにもかかわらず最低に近い投票率であり、「1票を投じる党がなかった」「棄権しても何も変わらない」「政治に興味がない」などをその理由として報じていたが、逆にいうと国民が声を上げ抵抗する必要もないくらい統治機構が安定していることを意味する。近年、役人の不祥事や失態が続き、税金泥棒、天下り天国、無駄遣いの温床、伏魔殿、政治を操る財務官僚等々特に霞が関のエリート官僚のバッシングが続き、その傾向は都道府県や市町村の役人に対しても向けられている。このような問題はあっても江戸の幕藩体制から現在まで国および地方の行政組織が官僚・役人によって強固に維持され運営されている。このような国は極めて珍しい。

  高度成長期には「霞が関」は、世界から最強のエリート集団、最大のシンクタンクと賞賛され、大蔵官僚を中核とし経済・医療・教育・労働、建設などあらゆる分野で官僚が日本をリードし、地方には知事、あるいは主要ポストに中央官庁から人材が送り込まれた。この全国に張り巡らされた行政システムが日本の繁栄の基になっている。

  一方、時代の転換期では官僚にない価値観や先見性・行動力で国を動かした政治家が紛れもなく存在している。吉田茂、岸信介、池田勇人、田中角栄、中曽根康弘、安倍晋三(教育基本法改正)等が挙げられるが、多くの政治家・議員は官僚・役人およびその行政組織の支えがあって地位を保てたといっても過言ではない。一般に、政治家は役人に強く、役人は住民に強く、住民は政治家に強いと言うが、骨のある役人は口には出さないが能力のない政治家・議員を信頼せず馬鹿にしているといってもよい。それは最近の政治家が社会および国に対する「志」や「価値観」が希薄で、職業としている政治家や自己顕示欲が強く地元や組織の利益代表としての存在でしかない議員が多いからであろう。

  しかし現在の日本には、官僚では対応出来ない問題が山積してきている。領土を巡る外交、国防、エネルギー問題、人口減・少子高齢化、破綻寸前の年金・福祉・介護制度、教育、経済成長戦略、地域の疲弊と格差拡大等、国のかたちと方向に関する問題・課題は、官僚・役人が得意とする経験則やこれまでの考えや方策では対処できない。地方分権や国土の再編、規制緩和などを中央官庁自らが推進するはずがない。3年半前、「脱官僚」「政治主導」、「役人を使いこなす」などを掲げ期待された民主党政権はものの見事に失敗し、どうして良いか分からず、消費増税も財務官僚の願望を満足させたに過ぎない。

  12月の衆議院選挙では、票ほしさから曖昧な主張をした政党、明確な政治理念を持たない政党が大敗し、一応まともな政治公約を掲げた政党が勢力を得た。憲法改正、防衛、地方分権、税配分、原発を含むエネルギー政策などを徹底的に論議し、その方向を示すのは政治家の使命そのものである。今こそ国はじめ地方の首長を含む政治家が志と理念を持ち、行動するよう求めたい。政治さえしっかりしていれば、組織防衛や自己保身・責任回避体質、画一的な行政手法、有名なパーキンソンの法則(仕事の軽重・有無に関係なく、役人の数は一定の割合で増加する)など役人組織の持つ弊害を回避し、専門家集団、プロ集団としてその能力を発揮できるはずである。

  今回の選挙を通して感じたのは、候補者を選び1票を投じなくても、落選させたい候補者・政党の名前を書かなければ大物といわれた政治家でも消えていくということであった。地デ研は、政治的主義主張は排除しているが、国土の再編と統治機構の改変、政と官および民の新たな役割分担等に取り組む政治家には、今後積極的に支持し応援していきたい。