悠悠禄

都市計画の常識が通用しない震災復興

-何故復興が遅れているのか-

平峯 悠

 8月末の東北震災シンポジウムでは、大津波とそれによって引き起こされた被害の大きさに呆然とした。震災以降ガレキ処理をはじめ仮設住宅の建設、漁業基盤の整備などにURや多くの自治体が懸命の努力をしているにもかかわらず、1年半も経っているのに復興が遅れているのは何故か。それはこれまでの都市計画やまちづくりが想定していない問題・課題に直面しているからに他ならない。その想定外とは次のように考える。

◇想定外-1:土地利用=合理的な土地利用が考えられない(便利な所には住めない) 

 津波が全てを流失させた土地はまちの中心地であり最も効率的で便利な土地であった。しかしその場所は居住制限地域となり、人々は高台移転せざるを得ない。それに伴う商業・サービス系の施設立地も計画できない。海に近い沿岸部は便利で景観もよく道路や鉄道も整備されていた。その土地を利用出来ないというのは「合理的な土地利用」が図れないということである。残された広大な土地の利用についても見通しが立っていない(公園?)。

◇想定外-2:人口減少=人口が減り続けるという中では共同体が成り立ちにくい

 全国的にも人口減少社会に移行していくなか、東北地方はその傾向が強い地域であった。大震災と津波でコミュニティーが散逸しさらに人口流出も生じた。このような状況で地域共同体をどのようにして再生し、生活様式や伝統、文化を守り続けることができるのか。これまでの都市計画や都市政策では想定していない問題・課題である。

◇想定外-3:地盤形状=自然に対抗する人工的な土地を創り出さねばならない

 大地震は各所で地盤全体の沈下を引き起こした。その修復に加え津波対策のため平地を利用する場合、地盤を広範囲に盛土しなければならない。高台移転を可能とするには山地部を大きく削り取らねばならない。さらに大津波から財産や命を守るためには巨大な防波堤や防風林、さらに人工的な巨大構造物が必要と考えられている。私達はそのような大規模な自然改変についての経験がなく、そのことが正しいのかも判断しかねている。

◇想定外-4:都市施設整備=新たな手法や計画論が必要

 区画整理や既存の市街地整備手法の適用には限界があり、また高台への避難道路を含めた安全な道路網(適正密度や数量化の方法)については新しい計画理論が必要である。東海南海地震に備えるためにも早急に議論を始めねばならない。

 

 都市計画は経験工学であり、これまでの事例や考え方をより発展させ、より良い都市を造っていくということを繰り返してきた。しかし東北の震災復興ではその常識が通用しない。今後日本列島のどの地域も大災害が起こる可能性があり、また人口減社会の進展、限界集落やそれに似た地域が急増することから、まちづくりや都市計画の面から、住み働くということの意味、自然観、災害との共存のあり方、国土や地域共同体の再編成についての議論が必要であると考える。それが遅れている東北の真の復興につながると考える。


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