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「五新鉄道復活」の可能性を探る

~五新線跡バスツアー同行記~

大戸修二

  森林資源の利活用に連動した地域活性化の動きが各地で見られる中、奈良県五條市では、木質バイオマスの活用方策を検討する一方で、建設段階で中止された鉄道路線の「幻の五新鉄道(五新線)」復活機運にも注目が集まっている。5月26日には、観光バスによる「五新線跡バスツアー」が行われ、有志とともにツアーに同行してみた。


五新トンネル内を走行(下はトンネル坑口と路盤)

丹生川に架かる五新線橋梁(右)と賀名生旧皇居
  

 奈良県南部の吉野地域は、昔から日本有数の杉の産地。五新線とは、奈良県五條と和歌山県新宮を鉄道路線で結ぶことで、木材の物流ルートを確保しようと大正時代に計画された。昭和14年に着工、戦争激化で中断後、戦後に再開され、五條~城戸~阪本までの路盤工事が完成。しかし、木材需要の低迷、国鉄再建問題のあおりを受けて、列車が走ることなく廃線(未成線)の憂き目を見ることになった。現在はバス専用道として、JR五條駅前~城戸までを奈良交通の小型バスが運行(往復平日5便、土日祝日1便)している。

●60名が参加、車窓から熱い視線

  ツアーには大学関係者、民間企業・NPO関係者、奈良県関係者、医師・文化人ら様々な分野から約60名が参加、バスの中から幻の鉄道路線に熱い視線を注いだ。近鉄生駒駅前を貸切バス2台で出発した一行は、五條バスセンターを経由し、国道168号線から五新線跡バス専用道に入った。大型バスの通行には道幅の余裕がないため、橋やトンネルでは徐行を余儀なくされ、車窓越しにトンネル側壁がぐっと迫る。バスセンターを出て45分後、長いトンネルを抜けると賀名生(あのう)バス停に到着した。

  当地は南朝の史跡・賀名生旧皇居(堀家住宅)や梅林、賀名生の里歴史民俗資料館などもあり、歴史と自然が織りなす観光名所になっている。参加者を対象に現地セミナーも開催され、発起人の新名惇彦氏(奈良先端科学技術大学院大学副学長)が「五新線跡への蒸気機関車プロジェクト提案」の概要を説明。また、講師陣から「バイオマス発電」や「全国のSL事情」などが紹介された。

●1口1万円募金で小型蒸気機関車走行が目標

  五新線跡蒸気機関車プロジェクトの提案は、①路盤に耐える軽量小型蒸気機関車②燃料は再生可能な木質バイオマス(バイオコークス)③観光客に安全・快適な低速走行(時速30km)④車両の一部は木質バイオマス運搬用⑤発着当初はJR五条駅~城戸、その後に阪本まで延伸―というものだ。資金源は有志による寄付を想定、中古線路と枕木が1mあたり8,000円、五條~城戸12.5㎞で1億円と試算。新名氏は「1人(1口)1万円の募金なら可能ではないか」と期待している。

    地球温暖化問題や昨年3月の福島原発事故を契機に、化石燃料や原子力発電に代わる再生エネルギー源として木質バイオマス有効活用への注目度は日ごとに増している。豊かな森林資源を活かした「地産地消」という今回の取り組みが、着実な一歩を踏み出すことを期待したい。

<参考写真> 丸瀬布森林公園いこいの村(北海道紋別郡遠軽町)を走る蒸気機関車(軽便鉄道「雨宮21号」)。軌間762mm、全長2km。国内唯一の森林鉄道蒸気機関車の動態保存。その昔、森林鉄道として木材を運んだ。(写真は遠軽町HPより)
http://engaru.jp/kankou_info/maruseppu/sinrin-kouen/ikoinomori.html