REPORT

討論会「東日本大震災から学ぶ」

 6月2日の通常総会終了後の討論会「東日本大震災から学ぶ」では、東日本大震災の被災地と様々な形で関わってきた地デ研メンバー、片瀬範雄氏、佐々木隆志氏、道下弘子氏の3人が、立場が違うそれぞれの視点から話題提供を行った。その一部を掲載する。(文責:大戸修二)

■大切なのは地域ごとの特色を活かしていくこと

片瀬氏 片瀬氏は、被災地の視察を通じて感じたこと、「神戸防災技術者の会」視察報告で学んだこと、震災直後から神戸市とカウンターパート的関係ができた岩手県大槌町の復興支援の中で感じたこと、などを話した。

 大震災直後支援での課題として片瀬氏は、「情報提供の脆弱性」を指摘。「立派な情報ネットワークはあったものの、使いこなせる人材はごく少数だった。簡単な日常システムへの転換の重要性、情報の一元化の必要性を感じた」と話した。また、被災地支援で阪神淡路当時との違いについて、「マイナス面だけでなく、プラス面も前面に出した総括と検証を行い、今後の災害に備える必要性を感じる」と思いを語った。

 被災自治体への支援では、「より熱いものが求められると思う。また、原発被害のある福島県を含め復旧・復興へのスピードが異なる中で、それぞれに応じた支援が必要だ」とも。

 復興を担当する自治体職員が総務省や国交省等の要請で派遣されているが、その数は要請を大きく下回っているという。「なぜかといえば、行財政改革に伴う定員削減、事業縮減に伴う経験者不足、団塊世代の退職に伴う技術者不足があり、自治体も手伝いをしたくとも出来ない状況にある。一方で、自治体支援にOBをもっと使うべきとはいうものの、現行法の壁が立ちはだかっている」と強調した。

 策定まで2ヵ年という復興計画だが、既に1年3カ月が過ぎようとしている。「レベル1、レベル2の議論がごちゃ混ぜになる中で、どのような復興を目指すのかが不明のままに2年の期限が迫りつつある。その中で、支援に入っている大槌町では、町内10地区に地域振興協議会ができ、昨年12月に復興計画が提案され、実現化へ向けた動きが急ピッチで進められている」と状況を説明した。

 片瀬氏も地域振興協議会でいろんな観点からの議論を聞いたという。「大切なことは東北人特有の粘り強さや信念を重視し、地域ごとの特色を活かしていくこと」。また、「津波襲来への命の大切さ、その一方で生活の糧を得るため海岸部に住みたいという『2つの思いがこもった復興』がなされること
を願いたい」と締めくくった。

■地域社会に参画できる「共助」の手仕事づくりを

佐々木氏 佐々木氏は、大震災1カ月後から被災地を訪れ、「自ら何ができるか」を模索、独自の動きを開始。今年3月には盛岡市に住民票を移し、「SAVE IWATE 岩手ソーシャルビジネススクール」事務局長として地域での本格的な活動を始めた。話題提供として、被災地域での民間レベルの地域復興支援活動事例などを紹介した。

 同ビジネススクールでは「未来を担う人づくり」「夢をつなげる仕事づくり」をテーマにインキュベーションでの挑戦を始めだした。佐々木氏は「都市型モデルを持ち込むのでなく、収入が低くとも互いが生きていける共助の可能性を追求。老人、女性らが地域社会に参画できる手仕事づくりに関わっていきたい」と仕掛けづくりへの意欲を語った。しなやかな地域経営「地域SPC構想」の具体化を目指している。

■今後に活かせる「災害エスノロジー」調査 

道下氏 道下氏は、昨年6月から国交省による自治体支援「リエゾン」の活動を現地取材、8月には受け入れ側の自治体、8人の首長にも話を聞いた。取材での走行距離は2,900㎞を超えたそうだ。自治体側のリエゾンに対する要望は様々に異なっていたが、「ともかく人がほしかった」のが自治体側に共通した願いであり、多くの自治体首長は「人を送り込んでくれたことがよかった」と異口同音に評価していたという。

 道下氏は今回の取材をもとに、著書『東日本大震災 語られなかった国交省の記録~ミッションはNOと言わない』を出版した。「災害エスノロジー調査(=被災地の様々な人から生の声を聞き、一般化、翻訳して教訓として残す活動)は大事なこと。その意味合いもあって取材した。次の災害対応に少しでもプラスになってほしい」と締めくくった。

<3氏の話題提供の後に意見交換(討論会)が行われましたが、紙面の都合で割愛します>