主張

ベルリンの壁、崩壊中!@大阪

尾花英次郎(大阪府)

 年明けから「グランドデザイン・大阪」(GD)というビジョンづくりに携わっている。 「大阪都」実現に向けた大阪府と大阪市の一本化、いわゆる府市統合に伴って、2050年の大阪の将来像を描こうとするもので、計画内容は詳述しないが、夢があって楽しい、斬新な手法だ、はたまた、コンセプトがない、実効性に乏しいなど、議論百出である。

 確かに、スピード感を優先し、語弊はあるが「行政の側で決めつけない」姿勢を貫いた「余白のあるたたき台」としているだけに、荒っぽさが目立って稚拙かつ無責任に映るのだろう。しかし、問題を提起し、議論を巻き起こした点については、第一段階の使命を果たしたと感じている。 GDの最大の意義は、言うまでもなく「府と市の都市ビジョンの一本化」である。

 府市職員が共同で、都心部のポテンシャルを活かした「ワン大阪」の将来像を描こうとしており、論議の中で「府の技術者が東ベルリンに入って楽しそうに絵を描いている」と揶揄されたが、表現の仕方は別として、市内都心部を舞台にした仕事は実に新鮮で楽しい。

 私のこの実感が、今後、東ベルリン側の職員(笑)にも芽生えてくるとすれば、大都市・大阪のまちづくりには、大きな発展の可能性があると思う。逆に言えば、これまで「府市あわせ」(不幸せ)とまで言われた府市間の障壁は、双方の知恵・技術の交流を遮断し、第三者に二重の手筈を強いてきた点だけを見ても、計り知れない停滞を招いていたと言える。

 私の期待と目標は、具体的な計画内容やプロジェクトではなく、府市の職員が、民間企業や関係機関と連携のもと、我が街・大阪の将来のために新たな発想で力を結集することにある。都心に民間投資が集まりその効果を大阪全体で享受する、衛星都市群では過密な市街地を改造し豊かな暮らしを実現するなど、ようやく本来の都市構造、都市経営論が展開できる訳だが、この正常化は、大阪の都市政策上かなりドラスティックな出来事だ。

 新たな発想とは「利用者の視点」と「ストックの活用」である。この言葉自体は使い古された感が強いが、実際にアクションに移すという意味では未だ真新しいと言える。例えば、交通分野の利用料金適正化については、すでにハイウェイ・オーソリティー構想として高速道路の運営一元化に取組みつつあり、港湾や空港も同様である。

 今後の大きなトピックは公共交通機関、とりわけ鉄道経営の変革である。大阪都市圏に蓄積された鉄道ネットワークは世界に冠たるレベルであり、このストックを活かして、乗客が使いやすさを実感できるマストラへと進化させるのだ。個別経営の障壁を取り除き、全体最適化の中で各社の採算性も維持する「次世代の鉄道運営システム」を編み出す必要がある。折から、地下鉄民営化の動きが加速化しており、この機を捉えて、広域的な観点から鉄道網の利便性向上とその経営のあり方を具体化していかなければならない。地下鉄と私鉄路線のジョイントは一考の価値有りだ。府市統合と並びで、鉄道サイドの運営一本化・乗入れ自由化を実現し、強固なスクラムで「乗客に喜ばれる鉄道」をめざしたい。

 最後に、変革のうねりの中で、地域デザイン研究会の可能性についても触れたい。そもそも府市はもとより企業も大学も織り交ぜた地D研は、壁のない都市技術者の集合体であり、培われた人的ネットワークや知的蓄積は大阪・関西の財産だ。研究会内部の活動にとどまらず、府市、企業、関係機関の間の指南役や接着剤として大いに発信すべきだと思う。 府市の壁が崩れゆく今、都市づくりへの思いが強いメンバーが集う地D研に期待したい。


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