個別講演(1)

大阪駅周辺整備方針、その推移

岩本 康男氏(公益法人都市活力研究所顧問)

 5月4日、素晴らしい駅ができたが、これは国鉄では出来ていないだろう。分割民営化された成果である。

 南側のアクティーの増床で、今まではのっぺりした大阪駅であったが、はっきりしたファサードが出来た。これは大阪大学の鳴海名誉教授のお力であるが、強調したいのは 公共のエスカレーターが地下街に通じていること。すべてJRの費用で大阪市や地下街はお金を出していない。

 今回の駅舎改良の投資額は約2,100億円であり、うち駅舎関連に500億円、駅ビルの高層部分に200億円が費やされている。実に投資額の1/3が直接的にお金が儲からない部分に費やされており、これが梅田地区開発の全てと言える。公共貢献しながらビルを建てる。JRの駅ビルだけでなく、共用空間を皆で作ることがこのエリアの特色である。

 明治19年の地図を見ると、新地から南側は町になっているが、北側は畑や森である。大阪駅の位置関係は神戸や京都との関係から見ると南にたるんでいる。町から見るともう少し南側が良いが、国土軸から見る地もう少し北が良い。町と国土軸との合理的な位置に作られている。当時、駅近くには狐塚があり、今でも駅前第1ビルではお祭りしている。駅前第2ビルにはお狸さんをお祭りしている。

 

 大正9年の市区改正設計図を見と、国道1、2号、御堂筋等が既に入っている。ないのは新御堂筋だけで、現在の梅田は市区改正設計がベースとなっている。大正9年には国勢調査があり大阪市の人口は125万人であったが、大正14年の第2回国勢調査では211万になっており、東京を上回った。東京は慌てて周辺の市町村を合併した。

 

 戦前のまちづくりでは、国鉄大阪駅が高架化されたこと、旧の阪急ターミナルが作られたこと、阪神電鉄が地下に入ってきたことの3つが、まちづくりと鉄道を結ぶ最大のポイント。ちなみに、阪神百貨店は道路下を専用しているようになっているが、これは阪神電鉄が出入橋から今の位置に地下線で入ってくるときに、阪神が上部も造り、大阪市に寄付した結果である。

 ダイヤモンド地区は再開発を市街地改造事業に則り22年間に亘り行なって来た。戦後一番目についたのがこの地区の木造密集市街地であり、闇市も残っていた。「この地区を何とかせんとあかん」と言うのは皆の思いであった。998戸を4棟に集約した。998戸というのは1戸あたり36u。この事業に対しいろいろ言われるが、権利者が1,270名であり、これを地主・家主・借家人を4:3:3の権利割合で調整し、4棟のビルにした。今の私たちにできるか?マスコミが許すだろうか?大変な反対運動をやっており、最後には地主は積極的になったが、家主・借家人はすごく反対しており、何回折れそうになったか判らないと聞いている。この時初めて住民参加と言う言葉が大阪では生まれた。第1ビルは昭和42年に建ち、再開発をする時代が来るであろうが、今の大阪に知恵と馬力があるだろうか?22年の歳月と2,000億以上の金を投資したが、再々開発は次世代の課題ではないかと思っている。

 戦後の梅田を集約すると、鉄道が梅田を育てたと言える。昭和4年の調査では国鉄・阪急・阪神を合わせて14万人の乗降客であったのが、今は250万人になっている。乗降客のボリュームが1桁増えたが、戦後の大阪駅周辺は4つのエリアと3つの拠点と地下街で表せる。4つのエリアとはダイヤモンド地区・西梅田・茶屋町・北ヤード。3つの拠点とはJRの新しい大阪駅、梅田阪急ビル、大阪神ビル。この3つの拠点の開発時の公共貢献によって歩行者の回遊性・快適性が作られている。梅田阪急ビルについてはデパートの床が増えるとかではなく、人の流れをどうするかからスタートして、梅田阪急ビルの建て替えに至っていること、地下街との連続性が改善される点を評価して欲しい。大阪神ビルはこれからの開発であり、大阪駅、梅田阪急ビルの考え方を踏襲して開発されるであろう。

 大梅田のパワーは集約すると、4つのエリアの個性が魅力になっていることと、3つの拠点の公共貢献で人の流れが快適になっていること。弱いのは大学機能と文化である。幸い大学のサテライトオフィスが増えてきたし、中津南小学校跡地にインターナショナルスクールが入る計画になっている。ナレッジキャピタルから見て魅力的な施設が来ることになる。

 大梅田地区は約1km四方のエリアであるが、その周囲に中崎町、野田・福島、新地、中津と言う低層の楽しいビレッジがある。このビレッジの魅了を加えて大梅田の魅力とすべきであろう。

 最後に問題提起をさせてもらう。東日本大震災後の日本における関西の役割を考えると、国際空港や港湾、研究開発・生産機能はしっかりしているが、都心機能が弱い。3つの機能はセットになって議論していかなければならないが、大梅田では憩いとか賑わいに加えて国際的な視点に立った機能を議論していく必要があるのではないか?


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