平成15年2月8日13:00〜16:30
於:中央電気倶楽部

NPO法人地域デザイン研究会
2003フォーラム記録
「目覚めよ!都市再生」
〜公・民・NPOによる新たなまちづくり手法を求めて〜

基調講演「都市再生と草の根まちづくり」

講師:伊藤 滋氏
(東京大学名誉教授、早稲田大学教授、慶應義塾大学客員教授)

伊藤でございます。どうもこんにちは。

都市再生本部は一昨年の5月8日にできました。小泉総理が本部長、副本部長が福田官房長官と扇国土交通大臣、本部員は残りの大臣全部です。閣議決定とほぼ同じような決定が都市再生本部の決定です。閣議決定は日本の政治上一番力のある決定です。閣議で例えば社会福祉の関係で介護保険制度を変えたいとか決めます。それに基づいて法律がつくられます。重要なことは閣議で決まったことは、厚生労働大臣だけでなくほかの大臣も協力して法律を作れという効力を持っていることです。都市再生本部の決定は閣議決定くらいの重要性があるというのが一番最初に言いたいことです。しかし、この本部は内閣の官房につくられていまして、そのために、お金がないのです。そもそも内閣官房に事業費をまわすいわれはないということです。内閣官房のお金は総理の外国に行く旅行代、記者に対する発表を段取りするお金ですから、補助金でも事業費でもございません。それがしきたりになってきていますからお金がない。総理大臣の特別補佐官をしている牧野徹という方がいます、かれも間違えていたんです。都市再生推進費というのがあります。予算で。ぼくは2〜3000億円くらいはあると思っていました。大阪につかみで500億くらい渡してもいいだろうと考えていました。実はとんでもない、150億円しかない。道路特会は何兆円、河川でも何兆、農林省の土木でも毎年1兆くらい使っています。何で150億円なのか。実は国土庁が国土交通省に合併したときに持っていた調査調整費、事業調整費というのがあります。昭和の40年頃には、政府や民間にもお金はいっぱいありました。となるといろいろの役所が一つのプロジェクトに頭をつっこんできます。そのための調査費としてお金が150億円あったのです。これを国土庁がもっていた。僕は大学にいるとき、調査調整費が1千万円くらいどこかの財団におりるぞという話がよくありました。その調査委員会に入ると地方の都市調査に50万くらい出るという話が僕にもありました。この調査調整費150億円の枠を国土交通省になったので移しかえました。それを使っているだけなんです。調査調整費を名前変えて都市再生推進費にしている。そうすると大蔵省は安心するわけです。大蔵省は金を使うなという役所です。都市再生本部は官房ですから金がない。その決定を、本部は各省におねがいをして実行してもらうというのが、その道筋です。都市再生本部に役人が40人くらいいます。国土交通省だけでなくて政策投資銀行や東京都庁、他の銀行、都市公団とか、他から10人くらい来ています。その連中がなにをやるか、金がないけれど、再生本部の決定という大枠の話が決まっている。各省にまたがることですから、足でかけまわって口でしゃべってこれは大事だから何とかしろというのです。例えば、金を持っているのは国交省でいうと道路局の国道課とかです。そこに行って都市再生本部の役人がこれは都市再生本部で決まったことだから少し金をまわしてよというんです。決定権は原局にあるんです。そのしがらみの中で、私たちの勉強チームが出来上がっているということをまずご認識ください。

都市再生というのは、2つの側面を持っています。都市再生は小泉さんの政策の重要な柱ですから何とか国民の理解を得ながら拡げていきたいということですが、実態は今言ったことです。そこにぼくらの勉強チームがはいりました。都市再生を一生懸命みんなでやれば日本も少しは良くなるんだ、というラッパを吹くのが都市再生戦略チームの役割です。しかしただ吹けばいいのではありません。ラッパを吹くいわれはどのようなこところにあったのか、国民にご理解を頂かないと吹いたラッパも皆さん気持ちの中に入ってきません。

では、なぜこの都市再生が始まったかのでしょうか。この始まりはは阪神淡路大震災です。今から8年前です。このときに自民党政府も少しは何かを感じたんです。自民党政府は基本的に米を主体としている地域から出ている代議士さんの政府です。平場農村でいばっている連中が代議士になっているのが自民党です。ですから農業土木のお金1兆円というのは過去10年くらい減っていません。そういう自民党のおじさんたちも、この大震災ではちょっとこたえと思うんです。とにかく人柱が6500人です。日本の社会では人柱が出ないと道路がつくれないという話が昔から農村にありました。災害が起きると特別措置法ができます。補助率がアップされて、橋ができます。昔のうわさです。この次の台風でこの橋が落ちそうだなという話が農村でよくありました。そうするとその橋の手入れはしません。たまたま、その台風のときに橋に乗用車が1台いて橋と一緒に落っこちて人柱がでたとします。こうなったら県庁の役人は代議士とすごい勢いで中央官庁に怒鳴り込みに行くんです。それで50億円よこせとか。この話は、橋本政権の前くらいまでの自民党政権の地方の役人と中央の役人のゲームでした。ずっと平場農村に国のお金が行っていました。ところが、阪神淡路大震災で何がおきたか、人柱が6500人もおき、古い住宅市街地がめちゃめちゃにつぶれました。初めて大都会の市民の声が中央政府に直接ぐさっと差し込まれました。しかし、日本人はすぐ忘れます、自民党も忘れてしまうんです。7年過ぎたら皆さんも気持ちも遠くなってしまいました。特に東京のジャーナリストは3年目くらいから手を引き始めました。自民党のおじさんも平場農村に戻ってしまいました。しかし、都市再生本部で何をやるべきかの原点は、阪神淡路大震災です。それは何かというと、住宅地を良くしなければだめだ、ということです。都市再生戦略チームでは今2つの目的があるといいましたが、そのひとつは、阪神淡路を忘れるな、それは住宅地をよくすることだということです。

もうひとつは、東京・大阪の国際競争力の強化です。H12年に衆議院選がありました。衆議院選のときに東京で自民党が惨敗しました。象徴的なのは東京1区選出の与謝野前通産大臣が落ちたことです。江東区の深谷という代議士も落ちました。東京23区で自民党で生き残ったのはひとりかふたりになってしまいました。政治における日本型文化大革命がおきました。阪神淡路で大変だといって3年たって衆議院選、衆議院選で自民党の都心派党員が落ちたそのときの幹事長が亀井静香です。亀井静香はプラグマティックな男です。だからやることが早い。4年前に石原知事が当選した。そのとき自民党の東京都知事候補が負けました。石原知事は無所属。これは大変だ、自民党も先が見えてきたというカルチャーショックが当時の自民党にありました。そのときの総理大臣は小渕さんでした。小渕さんはいいかたでした。人柄が良くて。率直に言って、今の小泉さんより小渕さんのほうが国民的人気があったと思います。当時、小渕さんに亀井さんが、大変だ、都会の連中を少し喜ばせないといけないと言ったにちがいありません。それで、亀井幹事長が大都市再生懇談会をつくりました。それが平成12年から13年にかけての頃です。東京と大阪、2つの大都市再生懇談会を国交省につくりました。そのときの言い方は、その結論は国交省大臣が総理大臣に出す、これを国の政治的課題として決めるということでした。それは大都市の市民を喚起させる点で有効なやり方でした。

その後に、小渕さんが死んでしまいました。そして森さんになりました。しかし、森さんの人気は最低に落ちてしまいました。それは自民党型の総理大臣だったからです。朝日を頂点とするマスメディアの感覚にあわなかったのです。いろんないいことをしてもあわない。最後はゴルフ場行ったときに宇和島の船が沈んでやめざるをえないことになりました。そこで亀井幹事長は最後のふんばりで都市再生本部をつくったんです。そして、道路特会を都市部に今までの2倍か3倍まわせというたんかをきったんですい。阪神淡路がおわって3年目に衆議院選があって東京の自民党議員が壊滅し、石原知事が当選し自民党知事候補をつぶし、その大事なときに小渕さんが亡くなった、森さんが出てきたけど朝日新聞あたりにこてんぱんにやられてその終わりが宇和島丸事件です。そこを亀井はやりくりしながらつなげてきた。それの答えが都市再生本部です。しかしその遠因は阪神淡路大震災です。それが都市再生本部をつくったと私は考えています。政治家はデイツーデイですから意識していませんが、話をつなげるとそういうことになります。

都市再生本部ができた、平成13年、バブルが急速な勢いで崩壊していました。東京はダメだ、大阪もダメだでした。海外のリーマンブラザーズとかJPモルガンとか、シンガポール政府の公社とか、そういう海外の資本がすごい勢いで日本に上陸してきていました。山一がつぶれ、野村くらいは生かしておいて、あとの日本の証券会社は外資に支配されかねない状況でした。実際にそのころ、東京の大きいビルにものすごい勢いでアメリカ系の会社が日本支社、アジア支社をつくりました。そしてバブルで落ちた不動産物件をたたき値で買いました。日本の資本はなすすべがなかったのです。そのとき、外国の商社やお金が東京に来てくれる間はまだいい、と日本のビジネスリーダーは考えました。20年前だったらそんなことは許さなかったです。東京大阪に外資が上陸する前に波際で排除しろというのが通産省の感覚でした。それががらっと変わったんです。ウインブルドン現象で、ロンドンは全部の会社がアメリカ系、ドイツ系、ユダヤ系になりましたが、雇用は守られました。ロンドンでいいではないかと日本の財界リーダーは考えたんです。ところが、3年くらい前から中国が変わってきました。香港と広東省とのつながりが強固になってきていました。広東省の製造業と香港の金融資本が一体となって、中国が世界の工場になり始めました。それからシンガポール巨大な物流基地になりました。そうなると、シンガポール、香港、上海等に、外国資本には支店を移したほうが利益が大きいということになります。それで出ていかれると、日本企業は国際競争に勝てない危険性が出てきます。アメリカを始めとする海外資本が、日本に残ってもらいたいと企業は考えだしました。こういうことがH12年頃の日本の経団連や中央政府の経済官僚の本音でした。

日本の経済的評価が急速に下がりました。H11から13年くらい、国力で1番か2番だったものが、とたんに5、17、40位くらいに下がりました。亀井幹事長が国際的な都市づくりを東京、大阪でやらないと日本の経済力はだめになると言い始めました。これは今でもそうです。ところで世界のビジネスリーダーが認知しているいるいくつかの重要な都市があります。あるオランダの経済雑誌が世界のビジネスリーダー約1500人から2000人くらいにアンケートをとった世界の都市ランキングがあります。100点はロンドン、パリ、ニューヨークです。次の4位は東京です。98点です。去年の10月のオランダの経済雑誌です。5位6位が同点で香港とロサンゼルス。都市計画家の評価から言うと世界の尊敬すべき都市に香港とロサンゼルスは入りません。尊敬すべき都市は例えばミュンヘンとかエジンバラです。ビジネスリーダーとは違います。その表は26位くらいまであるんです。しかし、大阪が出てこないんです。一度100位くらいまで報告書を調べてみようと思っています。ヨーロッパのビジネスリーダーの評価の東京に関する評価はまだ高いわけです。しかし、日本の経済のプレゼンスはヨーロッパでは大したことないんです。これはオランダの経済雑誌です。どうしてもそこの社長や会長はフランス、ドイツ、オランダ、イギリスなどの人が多くなります。しかし、日本の主戦場はアメリカとアジアです。ヨーロッパの人が東京が4位といっても実態はそうじゃない。例えば華僑のビジネスリーダーを集めてアンケートしたら東京は26位にも入っていないかもしれない。それを何とかしようとしたのが都市再生本部のはじめの文言です。日本の国際競争力を回復させるために東京や大阪の中心市街地に一点集中型の投資をしろということです。これは大変なことです。地方分権に反します。補助金の地方移譲にも反します。その国の対策は国が責任をもってくれと、財界が要請しました。ジャーナリズムもその話を支えました。日本の国際競争力を回復するには東京を支えなければいけない、こういう話です。これが都市再生本部をつくった本音なんです。そのことは、自民党の平場農村にいった金のいくらかを東京に持ち込むことです。東京で次に起こるであろう直下型地震対策のために、木造密集市街地をそのお金で直すんだ、と調子のいい話で政治的答弁が組み立てられるわけです。大都市圏の国際交流物流拠点の整備、大阪東京の環状道路体系、大阪圏のライフサイエンスの国際拠点の整備といったプロジェクトは、この考え方に立って決められました。大阪の中央環状道路もその線に沿っています。

都市再生チームはH13.9.21にスタートしました。そこで何を始めに言ったかを申し上げます。学者なので政治家と距離を置いています。

まず、すべての市民が安全で豊かな生活を営める都市環境づくりをしようということです。それは次世代に受け継がれるべき高質な社会資産をつくることです。国際的に尊敬され高い評価をうける都市空間造りです。

2番目に都市再生の構造変化が社会経済の構造改革をうながすということです。構造改革をするのは東京大阪の都市空間を変えるということです。それが社会経済の構造改革をサポートします。

それから市民参加による多様なまちづくり運動の展開を主張しました。その結果、都市再生本部決定のなかに、全国都市再生のための緊急措置、稚内から石垣まで、という言葉が入りました。これは何も私が高邁な精神で言っているのではありません。これは自民党政権が前から頼りにしている農村社会を意識しています。農村社会には地方都市が入ります。都市再生本部の資金配分でそんなに東京に肩入れして良いのかと自民党の代議士は考えています。道路族は全部地方です。国交省の役人も敏感です。1000億使える金が都市再生にあったとします。1000億を東京に700億、大阪に250億、名古屋に50億でいいの?、どうかねと思うのが自民党の体質です。意外と大学の先生も地方都市を助けなければという体質です。都市再生も少し地方に金を動かさねばという話題がおのずから出てきます。ジャーナリズムもそうです。こっち行けば反対のことをいい、逆のことを言ってもまた反対のことを言う。それで草の根がでてきました。一言で言うと地方にも少し味付けをしろということです。

小泉総理にあった記憶があります。そのとき僕は全国草の根国民推進運動稚内から浦添まで、と書きました。なんで稚内と浦添かというと、私は学校の教師ですからひねった表現をしたのです。稚内は今でもアメリカ軍の対ロシア軍事対策で、飛行機の動きを観察するレーダードームが置いてあります。これは日本が負けて以来半世紀ずっと置いてあります。大韓航空の飛行機をロシアが撃墜しましたね、あの時も稚内のレーダードームで全部そのストーリーはわかっていたはずです。北方を守る国防上の拠点であったんです。ソ連が崩壊するまで。日本とロシアの関係で稚内をそういう原点から考えることが大事なんです。浦添はアメリカ軍の補給物資の重要な港です。象徴的なことをいうと、ベトナム戦争の時にやられたアメリカの若い兵隊の遺体が全部黒いビニール袋に入れられて浦添の港にあげられました。浦添の倉庫の中で検死をされて沖縄の嘉手納かどこかから飛行機でアメリカにもっていかれました。アメリカ軍の対アジアの戦略基地として浦添は今でも使われています。しかしこれは学校の教師のこりおち的表現でして単純な役人や政治家にはその裏の意味はわかりません。単純に稚内は一番北、一番西は浦添でない石垣だということで役人が直しました。それで稚内から浦添は稚内から石垣になって世の中に披露されるようになりました。だから、草の根は高邁な精神から出たのではないのです。

それからもうひとつ重要なことがあります。草の根まちづくりと言った時に、都市再生は雇用に対してプラスの役割を果たすということです。都市再生戦略チームが発足した一昨年の9月からしばらくは、都市再生とは汐留とか品川に大きなビルを建てたり、外人さん向けの病院を作ったり、日米、日仏、日独の小学校をつくって欧米系のビジネスマンが東京や大阪に来てくれる話が中心でした。片一方で日本で失業問題がでてきました。失業率がこの3年くらいで2%から5%くらいにあがりました。失業がどれくらい日本を悪くしたかはご存じの通りです、社会が乱れ、犯罪がふえました。ヨーロッパでは失業というのは都市問題です。雇用をどういうふうに維持するかがヨーロッパの各国政府の中心課題です。日本はおかげさまで雇用問題がこれ迄はなかったのです。ところが今は土建会社には仕事がありません。地方都市にも雇用がありません。だから北海道で談合がおきるんです。厚生労働省に雇用対策のお金が千何百億くらいついているんですが、失業に対する一時支給金でまえむきではありません。もしかすると地方の都市で草の根まちづくり運動をすると、NPOなどができて雇用が少し増えるかもしれないという期待が生まれてきました。会社を定年で辞めた60歳過ぎのお父さんの2番目の就職口を見つけられるということに草の根街づくりは向いているかもしれないということです。

それはまちづくりの内容について今までとは異なることを考えればありうる話です。今までのまちづくりはコミュニティ施設をつくる、車椅子で歩ける歩道をつくるという施設建設が中心でした。これらは全部土建屋に関係するんです。建築や土木の行為は必ず道路、病院、集会所などをつくります。その工事を通して雇用が発生するんです。この集会所に10億かかるというとき、3億はセメントと鉄と砂利にいってしまうんです。1億くらいは企業の本社維持費、管理費。10億のうち、現場のおじさんにいく賃金はたぶん5億円くらいではないでしょうか。皆さんのための雇用といっても大部分のお金は鉄とセメントになってしまいます。それも太平洋セメントや新日鉄にいってしまうので、地元にとまりが悪いのです。それならば10/10人件費という街づくりプロジェクトを考えてみませんか。ソフトにまで拡げるといろいろ出てきそうです。一番簡単なのは役所が作った公園や公会堂の維持管理をすることです。有名なのは東京のフュージョン長池の冨永さんです。八王子市市役所が公団の住宅地の中にすばらしい公園、公会堂をつくりました。しかしそれを管理するのに市役所は多数の職員を配置しました。そして金かかってしょうがない。長池フュージョンNPOがそれを引き受けたら、維持管理費が2/3になって来るお客さんが1.3倍増えました。これ有名な話です。冨永さんがいっていました。NPOの事務局長になったとき、その給料は前の会社にいたときの2/3になったそうです。しかし事務局長になった方が男らしいと言っていましたね。公的施設の維持管理費は殆ど人件費です。雇用増に直結します。セメントも石も鉄も使わないんです。今必要なのは草の根まちづくりで60すぎのお父さんの2番目の就職口を増やすことです。本来共産党が言うべきことをぼくが言っているわけです。今言った維持管理の話は、土木屋には関係ありません。土木屋にも関係があって政府も喜んでもらえることは、土建業界がこのような分野に人材を派遣することです。

この間の2月4日の都市再生戦略チームの会合のとき、3つの話をしました。基本的課題を3つ提案したのです。1つ目が戦略的ナショナルプロジェクトの展開、これは中央省庁主体で東京大阪を何とかしようというもの、2つ目が市民直結した生活都市づくり、これは草の根ですね、3番目が美しい都市づくり。 戦略的ナショナルプロジェクトは5つ挙げていますが、その5番目に次のようなことを書きました。それは地籍の抜本的調査です。これは人件費100%です。平成の小泉検地をやれということです。かって太閤検地がありました。聖徳太子の班田収受、これは田んぼを調べて何石田んぼからあがるかを調べる重要な仕事でした。ナポレオンも検地しました。そのためヨーロッパのオランダ、ドイツ、フランスにゆけば、1/500の正確な地図ができています。それが日本風に言えば登記所の公図なんです。ところが日本の土地は不思議です。建築基準法の敷地は法務省の登記簿にある公図に関係ないんです。法律的につながっていない。本来、国が定める敷地とはといったときにどっちが正しい敷地かというと、本来は登記所の公図の敷地です。ところが、この公図がいい加減なのです。先進諸国の中で、大都市部で1/500の地籍図がきちっとそろっていない国は日本くらいでしょう。韓国、イタリア、アメリカなど調べています。日本人はずっと放ってきました。日本の宅地の数は3500〜3600万くらい、3.5人にひとり土地を持つという感じです。この地籍の数も天文学的で先進諸国の中でべらぼうに多い。戦後半世紀いい加減にしてきた。隣りとの境界争いのとき、はじめて公図がどれだけ不正確かがわかります。区画整理をやるとき、はじめて法務省の公図がどれだけひどいものかわかります。全国の面積約37万Kuのうち、国土調査法にもとづく地籍はこの40年間程で約35%ぐらい行いました。どこやっているか、平場農村の大規模な圃場整備です。これは農業土木の補助金が入っていて地籍にきっちり位置づけされます。農林省が圃場整備すればそのまま法務省の登記所の公図として1/1000くらいの図面としてのる。それと国有林は全部調べている。民有林も一部調べている。35%のうちの30%くらいは森林と農村です。一番重要な都市部では5%くらいです。大阪市は全部の宅地数の中の5%だそうです。京都府の話は有名です。あるお店が川のそばにあった。細長いお店です。お店の敷地を確認に登記所にいったら載ってなかったそうです、アンタのところの敷地はのってませんよ、と言ったら、そこからが京都らしくて、私のお店は応仁の乱からずっとここにあるんです。実存の方が正しくて公図がおかしいんです。というのが返事だったそうです。東京も23区で11〜12%。ところで、これは測量ですから歳をとったおじさんが元気づきます。GISによる測量の精度が高くなりましたが、いくら精度が高くてそれだけで境界線を確定できません。実は地籍測量というのは丸い十字の金物を打ち込まないと地籍が確定しないんです。この金物を、境界に立ち会っているおじさんとおばさんの前で、測量の仲介人が打ったときにはじめて境界が確定するんです。土建会社を定年退職した現場監督のおじさんや、役所の用地部にいたおじさんたちが測量会社の嘱託になっていくほうが、若い無神経なおにいさんが行くより、人情の機微がわかります。ひとつここはひとつ私の顔に免じて、とかいって話を決めます。これはいいことです。これをNPOがやったらいいと思う。東京の杉並区の用地部のおにいさんにやらせると、年俸は35歳くらいで700万円、オーバーヘッドが7〜800万ですから、一人の役人に使われる税金は1500万位になります。しかし、NPOで60歳定年で年金を受けている人を雇う場合は月給20万くらい、オーバーヘッドいれても25万円、年間300万円ですので、5人おじさん雇えるんです。雇用に効くんです。測量ですから100%人件費です。公図がきちっとできることによって再開発が進みます。東京の六本木六丁目の有名な森ビルの再開発があります。あれは17年かかっているんですが、境界を確定し実測して面積を洗い出すことに7年かかっているそうです。もし公図ができていれば17年のうち7年はいらなくなるわけです。こういう話をナショナルプロジェクトとして打ち上げて、国の戦略として草の根で立ち上げる。そういう話を真剣に考えています。私が相当わめいたんで、国交省の土地局長が去年の秋、緊急整備地域についてはここ5年くらいで測量費を投入して全部地籍調査をしようと発言しました。

でもこれは、国交省だけでやってもダメなんです。実は土地を調べる民間側には2つのギルドがあります。2つが一緒になってやらなければいけない。ここでもそのためにNPOが必要なんです。道路台帳等、官と民が関わる境界は国交省の測量士が調査します。国交省お抱えの測量協会です。しかし、民間の土地同士の測量は法務省系の土地家屋調査士が調査します。ここで草の根のNPOが入って、土地建物調査士と測量士と一緒になってやっていこうというのは大事な話です。お役所ではできないんです。NPOがうまく調整してやっていけば、NPOにとっても手数料が取れますからプラスです。非常に大きなマーケットです。特に地方都市ではそういう雇用が重要です。

さて、ここで皆様に申し上げたい第2の話題があります。それは、セメントと鉄と砂利がいらない草の根まちづくり運動です。去年の11月につくった役所の公式文書があります。そこに、全国都市再生のための緊急措置、稚内から石垣までが明記されています。去年の5月ごろからやって集まったのは7〜8月だったと思います。草の根まちづくりをやる人は手を挙げて、案を都市再生本部にもってこいといいました。これを役人がやりますと県庁を通して市役所にまわります。いつものお役人の情報伝達ではつまらない。草の根なんだから民民で集めようという話が出てきました。学校の先生やNPO、まちづくり団体に情報を流しました。そうしたら去年の8月に全国から850くらい集まりました。官、県庁市役所を通したのが500、民間がだしたのが350くらいになりました。都市再生本部はこれ等を整理検討中です。いくつかのグルーピングをして協議会をつくり始めました。この850を役人流に分類整理しますと、駅などの交通結節点についての提案が多かった。防犯や防災も多かったのです。その他、歴史と文化を大事にする街づくりも目立ちました。八百何十のなかで具体的提案で重要と思われるものがいくつかありました。これらを都市再生本部は世の中に公示しました。そして、都市再生本部はあっちこっちの役所をかけずりまわって、各省の原課の持っている予算をこのような草の根まちづくりに振り向けるようにかけあっているようです。

もう一度ここで整理すると次のようになります。一番目は、安全で安心なまちづくりです。今まで安全安心というと阪神淡路大震災の教訓から防災まちづくりが出てきました。ここでは、防災まちづくりの他に、公園学校周辺などの日常生活の防犯対策が多くなりました。防災まちづくりでは、震災での帰宅困難者対策があげられます。

2番目に、歴史文化を活かした美しいまちづくりがあげられます。

3番目に誰もが能力を発揮できるまちづくりです。歩きやすいまちづくりをするということです。歩行者通路、駅前広場、高齢者が安心できる街等がここに含まれます。

4番目は環境つまり、ヒートアイランド対策や水を生かした街づくりです。その他、都市観光の推進などもでてきました。安全安心なまちづくりについておもしろい話を紹介します。防犯まちづくりについて大阪府警察本部からの提案がありました。大阪府警察本部がこういう提案を都市再生本部に持ち上げたのは、大阪府の各市での犯罪が余りに多かったからです。例えば東大阪市などで、大通りから奥に入った暗がりの多い地区、住民が不安を感じています。これを改善しよう、それに対して国交省付き合ってくれというわけです。東大阪というのは塩ジイの選挙区、同時に司馬遼太郎がいました。しかし日本で一番犯罪率が高い。ついでにいいますと、H13年までの実績では、全国の犯罪発生率の悪いベストテンのトップは、東大阪市です。二番目は寝屋川かどこか、トップテンのなかに大阪府にある市が4つ入っているんです。現在、東大阪市を対象にして、大阪府警察本部と大阪府が一緒になって本格的な調査を始めているようです。建築家、犯罪の環境分析する社会学や心理学の先生、大阪府警本部生活安全部の担当などが入って勉強会つくっているようです。

この市民防犯はまちづくりに大変関係あります。私鉄の駅前に駅広をつくってそこに必ず交番をつくるとします。ところが交番には今おまわりさんがいないんです。へんなボックスがあって、それをたたくと警察署のおじさんの顔が出てきます。これでは交番にならない。たくましくて、少し不器用だけど話せばわかる年配の警察官が2人くらいいるときにはじめて交番なんです。それならば正規の警察官はいなくもいいです。まず、私鉄の各駅に、交番を作ります。そこに嘱託警察官を配置するのです。香港には嘱託警察官がいます。市役所を5時に終わったおじさんが夜の7時からパートの警察官になっています。これが嘱託警察官です。土建会社で現場をやっていたおじさんで、自衛隊を定年退職したおじさんとか、体格がいいおじさんを3人一組にして、座ってもらっていればいいんです、ときどき3人で動けばよい。このおじさん3人がいれば、青少年は逃げます。今青少年非行が一番日本の社会を悪くしています。これを何とかしなければいけない。検挙率は、昭和50年代は50%超えていたのです。交通違反は除きます。普通のすりとかかっぱらいとか婦女暴行とか殺人とか市民常識で言う犯罪です。ところが今は18%。そこで警察は去年こういうことをいいました。“日本の都市社会で悪いことをしたやつを必ず捕まえるという保証はいたしません、よっぽどたちの悪いやつだけ捕まえます。”自分の家に空き巣が入って100万円とられたといっても、実態としてはなかなか犯人を捕まえられません。そのかわり是非皆さんの努力で身の回りを守ってくださいといいはじめた。これはNPOの仕事になるかも知れません。おじさん3人組もNPOのメンバーで、市役所と契約して警察官に手ほどきを受けて嘱託警察官になって夜町を歩くということです。北九州の市長は次のようなことを言っていました。まちを見てあらゆる情報を拾ってくれる市役所の職員は消防署の職員だそうです。この人達が一番情報を市役所にくれるそうです。消防署の主たる仕事は火を消すのではなく救急です。建物の中に入りませんけど、建物の外側は建築家の技師よりもきちっと調べています。どこに何か危ないものがあるのかもわかっている。24時間体制で動いている。消防署の職員の位置づけをもっと重要な位置づけにするといっていました。消防署の職員はお金がかかりますから、準消防職員、あるいは嘱託警察官を市役所は雇えばよいのです。お年寄りのNPOの人たちがいて、そこに厚生労働省は失業対策のお金でなく目的性の高い社会に対応できるお金を流すべきです。それは少し一般の時給より高くてもいいんではないでしょうか。

こういうのがソフトのまちづくりです。こんな話がこれからいろいろ展開されていくと思うんです。

美しいまちづくりといっていることも、NPOに深く関わることです。都市計画家に関わることです。私は最近次のような主張をしています。美しい都市づくり運動の一番目は電線の地中化、2番目は大きな街路樹を育てる。緑陰道路づくりです。これは総理大臣のメルマガにのせました。そして、3番目に美しい路地と横丁をつくりあげるために、小さな事業費をNPOやまちづくり団体に国が支給することです。これ地区計画をつくることでもあります。例の法善寺横丁の連担建築物制度は、ずばり地区計画でやるということであってもいいんのではないかと思います。屋外広告物の撤去縮小、デザインの統一にも小さな事業費をあてるべきです。これは市の条例で行いますが、やるという市役所には国が直接金を出すべきです。4番目は、地区計画に小さな事業費を結びつけて、ブロック塀を生垣や木柵塀金網塀に作り変えるべきです。5番目、地区計画によって、建物に屋根をかけ、棟線を統一することを小さな事業費で支援することです。

関が原から滋賀県に入りますと、一番美しいと思うのは、農村集落の屋根の棟線が統一されていることです。瓦もいいものを使っている、決まりを十分心得た棟梁がつくっているんでしょう。棟線を統一するだけでずいぶんまちは良くなります。昔の城下町は全部棟線が統一されてたんです。現在の街は、そのときそのときの若い建築技術者にゆだねられてつくられますからろくなまちにならなりません。残念ながら市役所や県庁にはお金がありませんから小さな事業費は出ません。国が補助金を手配しても県と市がお金がないとできないんです。

ですから、私は全額国費で小さな事業費を出せと言おうと思っています。それは5年という年限を区切って行います。なぜ5年かといいますと、都市再生特別措置法で緊急整備地域に金融支援するのは5年だからです。

まず美しい都市づくりという全体の運動を始めます。そして次に地区計画をつくって、国から小さな事業費を出させます。このような美しい都市づくりをやらない限りは日本は観光国家になりません。これは当たり前です。皆さんもヨーロッパやアメリカ行ったときにどこを見に行くかといえば都市を見にいくんです。日本では、見たい都市はというと、なかなか見あたりません。京都だってこのごろマンションたって乱雑になってきました。日本の都市をきれいにしない限りは観光国家になりません。観光立国といっているなら、美しい都市づくりを都市再生本部が動かすべきです。それが観光立国をサポートします。こういうのがいい意味での政府の総合施策かと思っている次第です。少し地べたをはったような話ができたかと思います。どうも失礼しました。


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